前回、グリーンランドについてとりあげましたが、その南東に位置する「アイスランド」も興味が尽きない不思議な島です。
アイスランドは、北大西洋上に位置する絶海の孤島で、日本人にはほとんどなじみがない国です。
地理の授業にはアイスランドは出てきませんでしたし、筆者はアイルランドと混同している時期もありました。
そんな小さな島のアイスランドが、現在では、平和度指数・男女平等度・LGBT理解度が世界NO.1の国といわれていることは知っていましたか?
アイスランドはどんな国なのでしょうか?調べてみましたので、最後までおつきあいください。
アイスランドとはどんな国?
アイスランドはイギリスの北西、北大西洋上に浮かぶ島です。
スコットランドから約800キロの距離で、日本でいうと東京から広島の距離です。
一番近くの島、グリーンランドまでは約290キロ、日本でいえば東京・名古屋間の距離です。
面積は10.3万平方キロメートルで北海道よりやや大きい程度です。グリーンランドの21分の1の面積です。
人口は35万3574人(2018年アイスランド統計局)で奈良市とほぼ同じ規模です。
首都は、南西部の都市、レイキャビ-クで人口約12万人です。
言語はアイスランド語ですがバイキングがもたらした言語で、外国人にはマスターするのは難しいといわれています。
しかし国民の多数が簡単な英語を話せますので、英語がある程度わかれば、旅行には問題ないようです。
宗教は人口の約8割が福音ルーテル派で、憲法で国教と規定していますが、一方で信教の自由も保障しています。
一人あたりGDPは、2018年で約74,500USドル(世界6位)で、日本が39,300USドル(世界26位)ですからアイスランド人は、数値上日本人より裕福です。
アイスランドの自然と気候は?
アイスランドは約2000万年前の火山の噴火で生まれた島です。
アイスランドは「火と氷の島」といわれ200以上の火山が活動中ですが、一方、国土の12%が氷河で覆われています。
アイスランドの火山活動はブルーラグーンの世界最大の露天温泉やギェイシルの間欠泉など観光スポットを生み出し、地熱発電所に利用されています。
氷河は近年の温暖化で、大地がむき出しになることもあり有名なヨークルスアゥルロゥンのような氷河湖が形成されています。
アイスランドで忘れてはいけないのが、夏は真夜中でも太陽が沈まない白夜と、冬には夜空を彩るオーロラです。
夏至を含む数週間が白夜となり、アイスランド全体がオーロラベルトの下にあるため、アイスランドのどこにおいても美しいオーロラを見ることができます。
アイスランドの南のスルツェイ島は1963年に海底火山の噴火で出現しました。
史上はじめて海底火山の噴火を世界中の人が目撃しました。2008年には世界遺産に指定されています。次に目撃された海底火山の噴火は日本の西之島です。
気候は、北極圏に接しているにもかかわらず、メキシコ湾暖流の影響で、夏は涼しく、冬は穏やかな気候です。
夏の平均気温は12度程度。冬は0度から-5度程度で同緯度のオスロやヘルシンキよりかなり温暖です。
アイスランドの野生動物たちは?
アイスランドに初めて人間が上陸したとき、唯一の陸上哺乳動物は北極キツネだけでした。
北極キツネこそ人間がやってくる前のアイスランドのオーナーだったのです。冬毛が真っ白になる白キツネと灰青色の青キツネの2種類がいます。
そのほかの陸上動物は移住者に持ち込まれました。
そのうち家畜としては、アイスランドの人口より多い羊(アイスランデックシープ)や寒さに強い人気のアイスランド犬・アイスランドシープドック、体長150cmのフレンドリーな馬・アイスランデックホース、アイスランドの国民食のヨーグルト、スキールに不可欠な牛たちなど人々の生活を支えています。
野生動物にはトナカイ、ウサギ、海には多くの種類のクジラ、イルカ、アザラシなどが生息しています。
ただアイスランドには北極クマはいません。たまに流氷に野ってグリーンランドからやってきますが、飢えていて危険なため駆除することを方針としています。
アイスランドの歴史とは?
アイスランド島は約2000万年前に火山の噴火で生まれましたが、9世紀にバイキングが移住してくるまで無人島だったといわれます。
となりのグリーンランドには4600年前にエスキモーが移住してきたにもかかわらず、気候がグリーンランドより穏やかなアイスランドに、なぜ人が住み着かなかったのか不可解です。
しかし島の存在は紀元前4世紀のアレキサンダー大王の時代から、世界の北の果てに、「チューレ」という太陽が沈まない国があるとの伝説はあって、気づかれてはいたようです。
870年頃、アイスランドに初めて移住したのはノルウェー出身のインゴールヴル・アルナルソンとヒョルレイヴルの義兄弟でした。
アイスランドという名前は、それ以前にやってきてすぐ退去したノルウェー出身のバイキング、フローキが山に登ってフィヨルドが氷に埋め尽くされているのを見て「氷の島」と呼んだためといわれています。
930年ごろ、争いを解決するための法と集会制度が作られました。全島集会をアルシングといい、年一回開かれます。リーダーはゴジと呼ばれ、集会を運営しました。現代の国会もアルシングと呼んでいます。
やがてゴジたちは支配の拡大を目指し権力抗争に明け暮れました。
1262年のころ、アイスランドはノルウェー王の支配下に入ります。
1397年、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンの3王国間の連合(カルマル連合)が成立し、デンマーク王の統治下に入りました。
15世紀中に黒死病(ペスト)が上陸、アイスランドは壊滅的な状態となり、3分2の住民が死亡したといわれています。
1550年デンマーク王は、アイスランドのカソリック司教ヨウン・アーラソンを処刑し、アイスランドを新教ルターに改宗させました。
その後、デンマーク支配が強化され17世紀、18世紀はアイスランドの「暗黒時代」といわれました。
19世紀に入ると、現在も「建国の父」と尊敬される文献学者、ヨウン・シグルソンの指導のもと、独立運動を展開し、1851年、アイスランド議会は独自憲法を求める決議を行い、1874年には立法権を獲得します。
1918年、デンマークより主権を獲得し、デンマークと同君連合のアイスランド王国が成立しました。
1940年、デンマークがドイツに占領されると、イギリスが進出しアイスランドを占領しました。
1941年、連合国の協定により、アメリカがアイスランドを防衛することになり米軍が進駐しました。
1944年、アイスランドは国民投票を経て、アイスランド共和国として正式に独立しました。
アイスランドの政治体制は?
アイスランドには国家元首として任期4年の大統領職が置かれています。
議会(アルシング)は一院制で、議員定数63人、任期4年です。
アルシング(国会)の多数派が政府を率いる議員内閣制です。
現在は、「左派緑運動」のヤコブスドッティル党首を首相として、「独立党」、「進歩党」との左右3党が100項目を超える共同政策綱領に合意し、超党派的に国政を運営しています。
外交については、北欧諸国間の協調外交を柱としつつも、産業・金融政策の自主権を確保するためEU(欧州連合)及びユーロ圏には加盟していません。
一方EEA(欧州経済領域)及びシェンゲン協定(出入国検査なし)に加盟することで欧州経済圏との一体性を確保しています。
2017年にはアジア等の非欧州地域との経済関係強化も重視する外交政策を打ち出しました。
特筆すべきなのは、NATOに加盟していますが、自国軍を持っていないことです。
駐留していた米軍が、米側の事情により2006年9月に撤退しましたが、有事の際は米国との二国間防衛協定に基づき、アイスランド防衛が保障されています。
アイスランドは近年の気候変動・北極海航路・海洋資源問題などの北極圏問題に力を入れて取り組んでおり、2013年から毎年10月首都レイキャビークにおいて「北極サークル」と称する世界最大規模の北極関係国際会議を開催しています。
⇒(下)に続くhttp://shine-stone.site/island-2/
参考:アイスランド・グリーンランド・北極を知るための65章
:外務省HP :在アイスランド大使館PH
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