アイスランドの産業・経済は?
アイスランドの主力産業は、水産業及び水産加工業で、水産物輸出が経済において大きな比重を占めますが、近年は再生エネルギーや観光にシフトしつつあります。
再生可能エネルギー(地熱及び水力による電力)を用いたアルミ精錬やフェロシリコン(鉄鋼原料)生産も盛んになっています。
近年は観光業も好調で、年間70万人以上の外国人観光客が訪れています。
2008年、アイスランドは深刻な金融危機に陥りました。アイスランド・クローナの価値は3分の1まで落ち込み、国家財政の破綻を引き起こしました、3大銀行が倒産し、当時の連立政権も崩壊しました。
その後IMFや北欧諸国等からの融資を受けて財政再建を図り、2011年8月の融資を最後にIMFの支援は終了しましたが、金融業界は再建の途上にあるといってよいでしょう。
現在、経済は回復基調にあり,成長率及び失業率はEU平均より良好な数値です。
アイスランド、平和指数、11年連続NO.1!
国際シンクタンクの経済平和研究所が発表した「世界平和度指数(GPI)」によると2019年も、アイスランドが第一位に選ばれました。
11年連続です。2位ニュージーランド、3位ポルトガルと続き、日本は9位でした。
GPIは調査対象国を163カ国とし、「国内外紛争」「社会の安全、安保」「軍事化」など平和に関連した3部門・23指標を数値化して点数をつけたものです。
どういう理由でしょうか。根拠になるデータが入手できないので推測するしかありません。
まず自国の軍事力を持っていないことがあげられます。
また米軍も2006年まではケプラヴィーク基地に駐留していましたが、米国のグリーンランドのチューレ基地重視と対テロ優先という米国の方針転換で撤収しました。
従ってアイスランドには軍事力がないことになります。ただし米国との防衛協定は継続され、NATOにも加盟して有事に備えています。
国内の治安については、アイスランドは凶悪事件や、テロの話も聞きませんし、外務省の危険情報もなく、非常に安全な国というのが一般的な印象です。
しかし、国連のデータで殺人発生率をみますと意外なことに、174ヵ国中36位で0.9件/10万人で上位ではありますが、例えば中国の0.56件/10万人より治安が悪く見えます。
しかし実数に直すとアイスランドの3件に対し、中国では約8000件の殺人事件が起きていることになり、どちらが治安が悪いか一目瞭然ですね。
アイスランドのような少ない人口を分母にした比率は誤解を招きますね。
アイスランドは男女平等NO.1!
アイスランドは、世界経済フォーラムが毎年発表する「世界ジェンダー・ギャップ指数」で、ジェンダー格差が少ない国として10年連続で世界1位に輝いている男女格差が世界で最も小さい国です。
1850年、アイスランドは、女性の相続権が男性と同一になった世界最初の国となりました。
1975年、女性の90%が参加し、家事や職場の一切から離れて、男女同一賃金を求めたストライキを行いました。これはアイスランドの男女平等を進める画期的な出来事でした。
1980年には、世界で最初に女性大統領が生まれました。
また、現在、国会議員の約4割、大学卒業の66%が女性で、女性の就業率は80%以上です。
2000年には育児休暇法が改定され、父親にも最低3ヶ月間の育児休暇取得が義務付けられました。
この法律では、子供の出生後の育児休暇(有給)は合計9ヶ月付与されますが、3ヶ月毎に夫婦が交替で休暇を取得、最後の3ヶ月は夫婦で話し合いの上、いずれかが取得しなければなりません。
つまり母親が全てを取得することは出来ないのです。
現在、この育児休暇期間を12ヶ月に延長する法案も検討されており、これが施行されると父親・母親共に5ヶ月間、残りの2ヶ月を夫婦いずれかで取得することになります。
2008年のリーマンショックを発端とする金融危機では銀行のトップ、金融当局にも女性がいないことを問題視し、積極的に女性の視点を取り入れて再建を図ることが社会的な合意をえ、ました。
2018年1月には「男女平等法」が改正され、世界で初めて男女間の賃金格差を違法とする「同一賃金認証法」が施行されました。
従業員25名以上の企業・組織は、男女間の賃金が平等であることを示す証明書を取得する義務を負うことになり,違反企業には1日当たり最大500ドル前後の罰金が科されることになりました。
この年、史上5回目となる女性のデモ・ストライキが行われました。賃金格差問題だけでなく、職場でのセクハラ・性暴力への抗議も行われています。
スローガンは「Don’t change the women, change the world」でした。
アイスランドは、真の男女平等の国に向けて、現在も進化中なのです。
アイスランドはLGBTを普通に受け入れる国
アイスランドは、男女平等だけでなく性的少数者である「クイア」やLGBTの人たちを普通に受け入れる国です。
1996年、同性間の婚姻と同等の権利を保障する「登録パートナーシップ法」を制定しました。
2010年には婚姻法を改正し、同性婚を正式に認めました。世界で9番目です。
その施行日に同性婚を行ったのが、ヨウハナ・シーグザルドウフティル首相で、国家のトップが同性結婚をしたのは世界最初の例となりました。
大手ゲイサイト・プラネットロメオがドイツの大学と共同で世界127カ国のゲイ・バイシェクシャル1万5千人を対象に行った「ゲイ幸福度指数2015」ではアイスランドが1位となりました。
以下ノルウェー、デンマーク、スウェーデンと北欧諸国が続きました。
アイスランドでは毎年8月には「プライド・パレード」が首都、レイキャビークで行われます。
プライド・パレードは、ゲイをはじめとする性的少数者への差別に抗議し、LGBTの人権を守るという趣旨で世界中で行われますが、アイスランドでは17回も行われていて、LGBT当事者だけでなく多くの人が世界中から訪れるビックイベントです。
この期間は町中がLGBTを象徴するレインボーカラーの旗、花、レイで七色に染まります。
その内容はレクチャーやパネルディスカッション、コンサートと様々ですが、メインイベントはパレードです。
パレードでは、参加者はレインボーカラーの仮装やボディペイントをしたりして、音楽に合わせメインストリートを進みます。
また巨大な山車も登場しその上で歌ったり踊ったりして観客を楽しませてくれるのです。
現在ではアイスランドの夏の風物詩となっていて、LGBTがアイスランドで普通に受け入れられていることを象徴するフェスティバルなのです。
このようにアイスランドは、男女平等とともに、LGBTなど性的少数者を普通に受け入れ、普通に生活できる国なのです。
氷の国 アイスランドとは?なぜ平和度指数・男女平等度・LGBT理解度世界NO.1?・まとめ
アイスランドは、日本でいえば一つの市程度の人口の規模の国です。
しかも、ヨーロッパ大陸から隔絶された絶海に位置しています。
しかし、その自然と歴史はダイナミックで波乱に富んでいます。
現在、地下資源の獲得競争などで北極圏が新たに注目されている中で、軍事力をもたず、大国のパワーバランスをうまく利用し、独自の政治路線と産業で生き延びようとしているのがアイスランドです。
しかも、男女平等やLGBTを普通に受け入れ、個々を大事にし、自分らしく生きることを重視する国なのです。
そんな魅力的な国、アイスランドに憧れる日本人もこれから増えていくのでしょうね。
最後までおつきあいありがとうございました。
参考:アイスランド・グリーンランド・北極を知るための65章
:外務省HP :在アイスランド大使館PH
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