箱根駅伝2021大会・劇的な結末は?

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2021年の新年は日本中が、めでたさも中ぐらいの春だったかもれません。

しかし、私は三が日の初詣を取り止めにしたので、毎年の楽しみである箱根駅伝をゆったりと観戦することができ、少しhappyでした。

第97回の箱根駅伝は、新型コロナの感染拡大のため中止の恐れもあり大変気をもみましたが2020年11月5日、主催者の関東学生陸上競技連盟より、例年の日程で実施することが発表されました。

主催者は、「応援したいから、応援に行かない」のキャッチフレーズで、大学関係者、応援団、OB、OG、保護者などの来場や沿道での応援行為の自粛、ファンの応援、観戦も遠慮していただき、自宅でのテレビ観戦を呼びかけました。

2021年1月8日には、関東1都3県には再び緊急事態宣言が発令されましたので、からくも箱根駅伝は太平洋戦争以来の中止を免れることになり、幸運だったと言わざるを得ません。

競技後、多くの選手、監督もインタビューの際には、大会が関係者の努力で開催されたこと、走ることができたことに心から感謝の言葉を述べていました。

さて2021年1月2日午前8時、無観客の大手町で号砲とともにスタートした2021箱根駅伝ですが、いつもの年のように、数多くの感動のドラマを生み、最期にはあっと驚くシーンもあって、箱根ファンは新春恒例の国民的イベントを十分に堪能したのではないでしょうか。

そんな2021箱根駅伝のレース展開についてまとめてみました。

2021大会の結果は?劇的な幕切れ!

2021大会は駒澤大学が13年ぶり、7回目の総合優勝を果たしました。

レースのクライマックスは最終区、しかもゴールまで2Kmの地点に用意されていました。

往路で初優勝を成し遂げた創価大学が、復路9区までトップを順調に走り続けていて、その差3分19秒でしたので誰もが創価大学の総合優勝を確信していたはずです。

しかし、第10区の終盤になって創価大の小野寺選手の背後に駒大・石川選手がひたひたと迫ってくると、日本中の誰もが「えっ」と絶句、手に汗を握り勝負の行方を見守りました。

そして最後の最後で、まさかの大逆転が起こります。

駒大は2020年11月1日に行われた第52回全日本大学駅伝でも勝利し有力な優勝候補でしたが、鶴見中継所の時点ではさすがの大八木監督も優勝は難しいと思ったようです。

ですからゴールを目の前にして勝利を確信したときの石川選手へ「やったね、おまえは男だ」と叫んだ監督の声は万感の気持ちがこもっていました。

駒大は2021年の出雲駅伝に優勝すれば三大学生駅伝制覇となります。

一方、創価大は最期に逆転され総合優勝は逃したものの、出場4度目で、往路初優勝、総合2位は見事な走りでした。初めてのシードとは思えない安定的な走りが印象的で、最終区を普通に走っていたらと悔やまれます。

第3位は、前回総合10位に沈んだ東洋大で本来の順位を取り戻しました。往路で2位となり復活優勝があるのではと期待されましたが、本当の復活は来年に持ち越されました。

一方、優勝候補の筆頭、青山学院大が、往路で12位と大不振となったのは大きな驚きで、もしやシード権を失うのではと思った人もあったかもしれません。

しかし、そこは前回王者であり2015年から6年で5回優勝した実力者の意地を見せ、復路優勝し総合4位まで追い上げたのはさすがでした。

前々回優勝、前回準優勝の東海大学は、秋の全日本大学駅伝でも2位で、優勝の呼び声も高かったのですが5位と期待外れに終わり、優勝候補に名を連ねていた全日本3位の明治大学は11位と振るわずシード校から転落するという結果に終わりました。

各区間の概要

第1区

各大学精鋭が揃ったため、全日本の第1区同様、高速レースが予想されたのですが、逆にお互い牽制し合い、最初の1Kmは3分33秒という希に見るスローペースでした。

5Km、10Kmでもペースは上がらず、横一線に選手が並んだ珍しい走形となりました。

残り1Kmで法政のエース鎌田が力強いスパートで東海大のエース塩澤を振り切り、区間賞を獲得します。

2位東海・塩澤、3位創価大・福田の順で、青学・吉田は6位、駒大のルーキー白鳥は振るわず15位、順天堂大のスーパールーキー三浦は力を発揮できず10位に終わりました。

しかしトップスタートの法大は鎌田のみが気を吐き、総合成績16位でシード権を失っています。

第2区

すぐに東海・名取法大・河田をかわしトップに立ちます。

14位でタスキをうけた東京国際大・ヴィンセントが爆走、7Km地点で一気に2位浮上し、9Km地点でヴィンセント、創価大・ムルワが、先頭を走る東海大・名取に追いつきます。

13Kmの権現坂付近でヴィンセントはピッチを上げ、2位ムルワとの差を広げ、そのまま戸塚中継所に駆け込み区間新のタイムをたたきだして3区の内田にタスキを渡しました。

駒大のエース田沢は15位から8位まで順位を上げるものの区間7位で不発に終わりました。

東国大・ヴィンセントは、昨年の東洋大・相澤の1時間5分57秒を8秒更新し、最優秀選手(金栗杯)に選ばれます。昨年王者、青学の中村は不調で13位に転落し早くも連覇は厳しくなりました。

第3区

東海大期待のルーキー石原が快走、11.5Kmで東京国際・内田をかわしトップに立ちます。

16.4Kmで創価大・葛西が2位に、駒大唯一の4年生、小林が区間2位の好走を見せ、20Km地点で3位に浮上します。

湘南の海岸線にかかり石原は独走、そのまま平塚中継所でタスキリレーし区間賞を獲得しました。

2位は創価大・葛西、3位は駒大・小林で、後続にタスキを渡します。

スーパールーキーの一人、中大の吉居は15番目の記録で振いませんでした。

第4区

6Kmで創価大のエースで眼に障害のある嶋津が力走し、トップを走る東海・ルーキー佐伯をとらえました。

13.4Kmでは駒大の新戦力、酒井東海・佐伯をかわし2位へ順位を上げます。

創価大・嶋津は期待の走りでしたが、18Km付近で左足がつったのか、しきりに足をたたき始めます。しかし、なんとか区間2位で、駒大に1分42秒差をつけ5区につなげます。

また5人抜きの早稲田・鈴木が3位に順位を上げ、東海大・佐伯は不振で6位まで後退します。

なお区間賞は山梨学院・オニエゴが獲得しました。

第5区

トップの創価大・三上は安定した走りで山を登り、2位以下との差を広げます。

東洋大のエース格、宮下は期待通り、積極的に力走し、3.2Kmで3位に順位を上げ、6.3Kmで駒大のルーキー鈴木をとらえ、一進一退のレースを展開、2位に浮上します。

満を持して10位でスタートした青学・竹石ですが、14Km地点で突然、足の異常に見舞われ、立ち止まってストレッチを行い、さらに17Km地点でもストップします。

結局、創価大・三上がトップでゴールイン、出場4年目で初の往路優勝を勝ち取りました。

2分21秒差の2位は東洋大、3位は駒大、前年優勝の青学は12位と不振に沈み連覇は困難となりました。

第6区

復路は翌3日の8時、曇りの芦ノ湖をスタートしました。

トップの創価大・浜野は快調な走りで出発しました。

1.2Km付近で駒大・花崎は2位の東洋・九嶋をとらえ、併走したあと追い抜きます。

花崎はさら快走を続け、じわじわ創価大・浜野に迫り、1分8秒差まで詰めますが、浜野は逃げ切り、トップでタスキを2区に渡します。

花崎歴代3位の区間賞を獲得します。3位は東海で東洋は4位に後退します。

青学・高橋は区間3位の走りを見せ10位に浮上し、ようやくシード権内に入りました。

第7区

先頭を行く創価大・原富と2位駒大・花尾は一旦54秒まで縮まりますが、原富は奮起し1分51秒差まで戻し8区につなげます。

東海大・本間は3位でタスキを渡し、期待された東洋大のエース西山は振るわず、区間12位で4位のまま順位を上げることはできませんでした。

区間賞は東京国際大・佐伯が獲得し7位から5位に追い上げ、青学・近藤も区間3位でチームは10位から7位に浮上します。

第8区

創価大・嶋津と同じ眼に障害をもつ永井は、2位駒大・佃に若干詰められたものの、安定的な走りで波乱なく首位で9区にタスキリレーし、創価大の初優勝の可能性が見え始めます。

3位には東洋大・野口が浮上、青学は岩見が健闘、7位から5位に浮上し青学の底力を発揮しました。

区間賞は歴代2位の記録を出した明治大・大保が獲得しました。

第9区

創価大・石津が力走して区間賞を獲得し、2位駒大・山野との差を3分19秒まで広げ、ほぼ勝負は決着とみられました。

19Kmで青山・飯田が区間2位の走りを見せ、東海・長田を離し4位まで挽回します。

国学院大・木付と明治・長倉は、抜きつ抜かれつの激しいシード権争いしますが、国大・木付が明治・長倉、東国大・杉崎も追い抜き9位に浮上し、明治は11位に転落します。

鶴見中継所では山梨学院大と専修大学のタスキが時間切れでつながらず、無念の繰り上げスタートとなりました。

第10区

トップの創価大・小野寺を追う駒大・石川は序盤から激走します。

13Kmの新八ツ山橋付近でその差は2分弱、16.5Kmの田町付近では1分強まで差が縮まります。

創価大・小野寺は優勝へのストレスなのか調子に乗れず、苦しい表情ですが、一方駒大・石川はまだ十分に余力が見られます。

この時点になると大逆転の予感で、日本中の観客は手に汗を握り勝負の行方を見守ります。

ゴール手前2Kmで、ついに石川が小野寺をかわし大逆転劇が起こりました。

石川はトップに立つとスパートをかけ一気に小野寺を引き離し、そのままテープを切りました。

駒大・石川は1時間9分12秒の区間賞、一方創価大・小野寺は53秒差でゴールし、区間最下位で明暗を分けました。

3位には東洋大が入り、青学は4位で復路優勝の実力を見せ面目を保ちました。

順大が7位で2年ぶりにシードを獲得しています。

総合順位

総合順位は下記の通りです。(前回)

① 駒澤大学(8位)
② 創価大学(9位)
③ 東洋大学(10位)
④ 青山学院大学(1位)
⑤ 東海大学(2位)
⑥ 早稲田大学(7位)
⑦ 順天堂大学(14位)
⑧ 帝京大学(4位)
⑨ 国学院大学(3位)
⑩ 東京国際大学(5位)
*前回6位の明治大学は11位でシート権を失いました。

主要大学の状況・戦略と結果

駒澤大学

駒大・大八木監督は優勝直後のインタビューで大きな喜びを表現することもなく、冷静な表情で「あきらめなければ、何が起こるかわからない」と言葉少なに語りました。

さすがの闘将も転がり込んだ勝利に気持ちの整理がついていなかったのか、あるいは、監督就任前の2001年の77回大会では逆に最終区間で順大に逆転されて総合優勝をさらわれた経験があり、敗れた創価大への配慮があったのかもしれません。

駒澤大は三大駅伝で大学トップの22勝をし、「常勝軍団」と呼ばれて久しいのですが、箱根では2008年以来、全日本では2014年以来、出雲駅伝では2013年以来勝てていませんでした。

大八木監督と言えば怒鳴り声の厳しい指導で有名でしたが、長く勝てない中で悩みながら学生気質の変化にあわせた接し方や練習時の伴走などコミュニケーションを重視した指導方法に変えてきたと、インタビューで述懐しています。

学生たちも悩める監督の変化を感じ、新しい大八木イズムが選手たちに浸透して、全日本、箱根の勝利につながったのでしょう。再び駒大の常勝時代が来るのでしょうか。

創価大学

最終区間で逆転を喫した創価大学ですが、数ある実績をもつ大学を尻目に旋風を巻き起こし、創価大の魅力をを箱根ファンに刻み込んだことは間違いありません。

前回大会では3回目の出場で9位に入り、初のシード権を獲得しましたが、榎木監督は就任1年目での快挙に、「私の指導と言うより選手たちの箱根で走りたいという強い気持ちがこの結果を生んだ」と選手たちを讃えました。

しかし、今季は、絶対エースの米満をはじめ箱根経験の4年生が3人去り、前回のシード獲得の功労者、嶋津が夏に不調に陥り休学し7、8月は練習ストップという事態となります。

そのため平均記録不足で全日本に出場できず、出場権を持つ出雲は中止となり、ロード経験なしで箱根にかけることになりました。

ですから、マスコミの前評判は、良くてもシード権内という低い評価だったのですが、榎木監督は「往路で3位を確保し、復路ではこれを全力で維持する」という強気の戦略を立て、ムルワ、日本人エースの福田、実力者嶋津、山上りに自信を持つ三上というチーム内の実力者を往路に投入します。

監督の狙いは実力校のミスもあり的中し、1区福田は3位、3区葛西で2位へ、4区嶋津でトップに立ち、5区の三上がそのままゴールし、往路優勝という快挙を成し遂げたのです。

復路もすぐに順位を落とすのではという大方の予想に反し、7区原富は区間2位、9区石津は区間賞獲得など9区までトップを維持し、堂々たる走りを見せました。

結果的に優勝を逃したものの、想定以上の成績を上げたことにメンバーは前向きにとらえ、小野寺もチームメイトの気遣いの中で再起を誓っており、来季も創価大の活躍が期待されます。

東洋大学

2020大会でまさかの10位に沈み、東洋大に何が起こったのかと箱根ファンは驚愕しましたが、酒井監督は「下位の選手層の底上げができず、中間層にぽっかり穴があいていた」と敗戦の弁を述べました。

今季、酒井監督は、「全員がキーマンになんだ」と一人ひとりの自覚と奮起を促しますが、その結果、下級生や箱根未経験者が台頭しました。

そこで監督は今大会は経験や実績でなく、現在の調子を重視したチーム編成を行うこととし、箱根経験者5人を外し6人の下級生や初出場の選手を選びますが、この方針は成功します。

レースでは、1区初出場の2年児玉、2区ルーキーの松山、3区の2年前田と5位でつなげ、4区4年の吉川は走りに悩んでいた憂さを晴らすような力強い走りをし、区間6位で主軸の5区宮下につなげると、宮下は右すねに痛みを感じながらも快走し、往路2位でフィニッシュします。

復路は6区1年の九嶋と7区の大黒柱西山は不振でしたが、一般入試で入学して陸上部に入部、4年で初めて箱根を走るチャンスをつかんだ8区の野口は区間2位の力走を見せチームは3位に浮上します。

さらに9区4年小田、10区2年清野とつなげ総合3位を確保しました。

今回は1度もトップに浮上はできませんでしたが、来年はエース宮下を中心に優勝争いをする本当に強い東洋大がきっと見られるのでしょうか。

青山学院

この数年の箱根での青山学院の強さを見続けると、2021箱根も青学が勝利すると多くの人が確信していたと思います。

ところが主将でチームの支柱の神林が疲労骨折で欠場せざるを得なかったことで、レースの前途に暗雲が漂います。

往路の1区吉田は4位で健闘したものの、2区中村が区間14位、3区湯原は14位、5区竹石が17位と不振を極め、チームは12位に沈んだため連覇は困難になり、さすがに原監督はゲーム・オーバーと落胆します。

5区の竹石は昨年故障で出場できず、リベンジのため留年までして出場を果たしたのですが、足のけいれんに襲われ失速し残念な結果となりました。

しかし、選手たちは「復路はシード権を確実に取りに行く」と目標を変え開き直ります。

6区高橋、7区近藤、8区岩見が3人とも区間3位、9区飯田は区間2位、10区中倉4位と青学本来の実力を発揮、復路優勝して王者の精神力を見せてくれました。

原監督も「次につながる走りを選手たちが見せてくれた」と選手を讃えました。

3年生以下に有力選手が多い青学なので来年の箱根では優勝戦線に戻ってくるのではないでしょうか。

箱根駅伝2021大会・劇的な結末は?・まとめ

以上、2021箱根駅伝の結果を見てきました。

それにしても、青山学院のような実力のあるチームでも、少し歯車が狂うだけで下位に沈むことになるという箱根の怖さを見せられました。

ただこれこそが箱根駅伝の醍醐味であるのかもしれません。

さて、2021箱根駅伝は新型コロナの感染拡大の中の異例の大会でした。

春の緊急事態宣言時は大学も閉鎖されるなど学生生活も制限されたため、合宿などのチーム練習にも大きな支障をきたしたようです。

出雲駅伝などのロードレースも中止され、箱根に向けた実践練習も十分でなかったかも知れません。

そういう中で選手たちは、個人個人、必死に精進し、箱根という大舞台で私たちに感動を与えてくれました。

箱根ファンには「箱根ロス」という言葉がありますが、来年の1月2日、3日が待ち遠しいですね。





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