2023年1月2日午前8時、大手町のスタート地点の天気は晴れでほぼ無風、4.9℃と真冬の気温ですが3年ぶりに多くのファンが駆けつけ熱気に包まれていました。
スタートラインの前列にシード10校、後列に予選会から勝ち上がった10校と学生連合の選手たちが揃うとビル街に号砲が響き第99回箱根駅伝がスタートしました。
昨年の秋から新型コロナ第8波が続くなかで迎えた2023年の新年、withコロナの流れで国の行動規制が撤廃され、大会主催者がマスク着用と間隔の確保、大声での声援を控えるよう呼びかけつつも沿道の応援規制を解除したためほぼコロナ以前の箱根駅伝に戻った大会となりました。
来年は100回大会という新時代に入る前夜の第99回大会ですが、今年もこの日のために厳しい練習に耐えて抜いた選手たちがチームの栄誉と自分の人生を切り開くために激走し、手に汗握る戦いを展開しました。
そんな国民的行事、2023年箱根駅伝の結果についてまとめてみました。
駒澤大学、盤石な走りによる勝利と学生駅伝3冠達成
大会前、2023大会を制するのは出雲駅伝、全日本学生駅伝を勝利した実力ナンバー1と目される駒澤大が最有力で、次に常に箱根に焦点を合わせくる、厚い選手層を持つ前年王者・青山学院大学、ダークホースが出雲、全日本2位と絶好調の国学院大というのが大方の見方でした。
そして結果は戦前の予想通り、隙のない盤石な走りを見せた駒澤大学が往路・復路とも制し、2年ぶり8回目の総合優勝を勝ち取り、史上5校目の学生駅伝3冠という勲章も手にします。
駒大は区間賞こそ6区のみですが、全選手が区間5位以内で走り1~4区まで2位をキープ、5~10区は一度も1位を譲らないという揺るぎないレース展開でライバルを圧倒しました。
2位は往路、復路とも2位の中央大学で、2001年以来22年ぶりに3強に入りを果たし、優勝回数14回を誇る古豪の復活が予感されます。
前年、大会新の圧倒的強さで優勝し連覇を目指した青山学院大は往路3位につけたものの復路の山下りでつまずき8位まで沈みましたが、9区で5人をごぼう抜きし順位を3位まで戻してゴール、連覇は成りませんでしたが前年王者のプライドを見せつけました。
4位は前評判の実力を見せた国学院大、以下前回総合2位の順天堂大が5位、予選会から這い上がった花田新監督率いる早稲田大が6位と続き、近年最強を誇った東洋大は10位でかろうじてシード権内に滑り込みましたが昨年4位から大きく後退しました。
一方、55年ぶりに本戦出場を果たした立教大は往路20位、復路16位で総合18位でしたが、全区間襷をつなげ満足のレースだったと言えるでしょう。
10位までの総合順位は次のようになりました。
(括弧内は前年順位)
1.駒澤大学(3位) 11.東京国際大学(5位)
2.中央大学(6位) 12.明治大学(14位)
3.青山学院大学(1位) 13.帝京大学(9位)
4.国学院大学(8位) 14.山梨学院大学(18位)
5.順天堂大学(2位) 15.東海大学(11位)
6.早稲田大学(13位) 16.大東文化大学(―)
7.法政大学(10位) 17.日本体育大学(17位)
8.創価大学(7位) 18.立教大学(―)
9.城西大学(―) 19.国士舘大学(15位)
10.東洋大学(4位) 20.専修大学(20位)
早稲田大、城西大が新たにシードを確保、前年5位の東京国際大学は11位、9位の帝京大学は13位と振るわずシード権を失いました。なお学生連合選抜は参考ながら国士舘の次のタイムでした。
各区のレース展開
第1区
レースはスローペースでスタートしますがすぐに黄色のゼッケン、関東学生連合選抜の新田颯(はやて)が飛び出します。新田は群馬県の育英大4年で選抜チームのキャプテンとして箱根は最初で最後の出場。1万メートルでは28分台の実力者です。
新田は9分後には後方に190メートルの差をつけますが2位集団は牽制しすぎかペースは上がらず、集団の形は横に広がります。
8キロ・新八ツ山橋付近では新田は1分19秒差で集団を400メートル以上離しノンプレッシャーの快調な走りを続けます。まだ20キロ以上あるため大集団から前に出るには勇気がいるようです。
10キロ過ぎ、新田は観衆に手をあげリズムよい走りを続けます。集団は依然動かず終盤の勝負に賭けているように見えます。もしオープン参加の学生連合がトップでゴールすれば史上初めてとなります。
17.6キロ、六郷橋付近にくるとようやく新田のスピードが落ちてきます。一方集団のスピードも上がり、中央大・溜池が前に出てくる一方東海・梶谷、東洋・児玉、立教・林が遅れ、専修・千代島はさらに後方において行かれます。
18.8キロ、六郷橋過ぎに前年7区で2位の実績を持つ明治・富田が満を持してスパート、駒澤・円(つぶら)もついていきますが青山・目片は遅れました。
19キロ、明治・富田、駒澤・円が先頭の新田に迫ります。
20.3キロ、ついに明治の富田が新田を抜き、トップ交替。新田は苦しい表情でついていきますが、駒澤・円にも抜かれます
鶴見中継所に明治・富田がトップで飛び込み、9秒差の2位に駒澤・円、学生選抜・新田はよく健闘し3番目で麗澤大・工藤に襷を渡しました。以降、法政、中央、創価と続き、青山は7位。
レース後、区間賞の明治・富田は「シード権のことを考えトップについていかず耐えて走った。自分のやるべき事をやれてすがすがしい気持ちで最期の箱根を終える事ができた」と語りました。
学生連合で存在感を示した新田は「残り3キロ付近から左足がつり始め限界に来ていた。声援が力になりうれしかった。箱根は雲の上の存在だったが積み重ねているうちに今日走れることができた。これまで周囲の皆さんに助けられたことに感謝したい」と謙虚に述べました。
第2区
9区と並ぶ最長距離のため各大学がエース級を当てる最重要区間。今年も学生長距離NO1の駒大・田澤、青山のエース・近藤、前回1区で15年ぶりの区間記録を塗り替えた中央・吉居、五輪代表の順大・三浦など実力者が揃いました。20mの上りの権太坂をどう越えるかが一つのポイントです。
最初からハイペースで飛ばしたのは中央・吉居で、早くも1キロ過ぎで駒澤・田澤をかわし2位に上がります。後半の権太坂を考慮するとハイペース。
吉居は3キロで先頭の明治のキャプテン、小沢に迫ると直後に追い越しトップに立ちますが小沢も遅れずついて行います。一方駒澤・田澤はまだペースが上がりません。
7キロ過ぎで吉居がさらにスピードを上げると明治・小澤が遅れる。やがて駒大・田澤も明治を捕え2位浮上。青山・近藤も快調な走りで上位に迫ります。
10.4キロ、青山・近藤が明治・小澤を抜き3位浮上。小澤はさらに後退し6位に。順大・三浦が遅れ7位に下がります。
12キロ付近で田澤が吉居に迫り、直後に先頭へ立つ。さすがに2区を知った走りです。青学・近藤も力強い走りで3位に上がり、2位の吉居に迫ります。
しかし田澤は13キロから権太坂に入ると苦しい表情、日差しも強くなってきた。大八木監督から「この後は近藤との戦いだぞ」と激が飛びます。
14.3キロ、近藤が吉居を捉え2位に浮上。吉居も近藤をペースメーカーにして遅れずぴったりついて行きます。区間賞も二人の争いか。
国学院・平林が快調な走りで5人抜き12位から7位に上がります。
19キロ付近、近藤と吉居が激しくつばぜり合いしながら田澤に迫ります。田澤は空を見て苦しい表情、「前へ、前へ」と大八木監督。
ゴール直前、中央・吉居がスパート、駒澤・田澤を抜きトップで襷リレーします。2位は駒澤、3位は青山・近藤で、2・3位の差1秒。
4位は留学生ムルアが4人抜きした山梨、5位も同じケニア出身の留学生ムルワの創価、第1区でトップの明治は2番手小澤が振るわず13位と遅れました。
昨年の一区に続き区間賞の中大・吉居大和は「後半に権太坂が苦しくなるとはわかっていたがライバルが多い2区で区間賞を取りたいと思って最初から飛ばした。本当に苦しかったが中野が待っていると思いがんばった。」と満足そうに語りました。
吉居と青山・近藤とは愛知県の同じクラブ出身でゴール直後ふたりは抱き合い健闘をたたえ合います。14キロ過ぎ、吉居は近藤に抜かれる時「ついてこい」と声をかけられスイッチが入ったといいます。弟の1年生、吉居駿恭(しゅんすけ)も4区で出場しています。
一方、駒澤・田澤は昨年12月に新型コロナに感染し2週間ほど走れず最終合宿も参加できなかったのですが急ピッチで箱根に向け調整しました。田澤はゴールに倒れ込みながらも3位で襷を渡し学生最強ランナーとしての意地を見せました。
第3区
前半は街なかを緩やかに下り、後半は湘南の海岸縁を進む平たんコースです。トップの中央大は20年振りに首位でスタート、2位の駒澤・篠原、3位の青山・横田は並走します。
3.7キロで6位、国学院・山本が山梨、創価を抜き4位に浮上。
エース級の記録を持つ中央・中野は快調に走り、7.7キロの藤沢では駒澤、青山との差は13秒差に広がります。4位は国学院・山本、5位は創価・山森、以降山梨・村上、東海・花岡と続きます。
8キロ過ぎ、白いキャップの順大・伊与田が力強い走りで5位まで上がります。
12キロ付近から湘南海岸に入り、風のない穏やかな日差しの中、中央・中野はすいすいとハイペースの走りを見せます。2区を走れる実力者で茅ヶ崎付近では2位を17秒差まで引き離します。
14位で襷を渡された早稲田のエース井川が爆走し8位まで順位を上げます。井川は前回1区で16位とブレーキとなりましたが予選会では奮起し日本人2位と力走しています
18キロ、湘南大橋付近で駒澤・篠原がスパートすると青山の横田はついて行けず、青山・原監督は「冷静に走れ」と声をかけます。
1位中央・中野と駒澤の差120mに縮まると中央・藤原監督「夏、あれだけ練習した。自信を持て」と声をかけます。
駒澤・篠原が中央・中野に迫ると駒澤・大八木監督は「お前は次のエースだ、男だろ」とさらに激を飛ばします。
藤原・中大監督も中野に「駒澤がきているぞ、がんばれ」と励ますと中野はギヤを入れ換えスピードを上げます。
中央・中野がトップを守って平塚中継所に到着、吉居大和の弟、駿恭(しゅんすけ)に襷リレー、2位は10秒差で駒澤・篠原、3位の青山・横田は遅れ26秒差でリレー。
国学院・山本、ゴール手前で選手に接触し転倒しかけますが無事4位で襷を渡し、5位に入った早稲田のエース、井川は9人抜きで久しぶりに早稲田の存在感を高めました。一方、4位で襷をもらい走った山梨・村上は不調で14位と順位を大きく下げます。
2区に引き続き区間賞の中央・中野は「吉居が区間賞を取り刺激された。プレッシャーはあったが自分の走りをして4・5区を楽にしたかった」と語りました。
第4区
10カ所の橋を渡り、細かい段差のある4区の注目は2・3区で区間記録を持つ東京国際の最強留学生イエゴン・ビンセントの走りです。
12位でスタートすると最初から加速し、2キロで2人を、3キロ付近で3人、5キロ付近では創価大・嶋津などさらに2人を抜いて一気に5位まで浮上、予想通り驚異の爆走を見せます。
一方、トップの中央・吉居駿恭も快調なスタートを見せますが、駒澤の次のエース鈴木が吉居を上回るペースで追い上げます。
7キロ付近で、ついに鈴木が吉居を捉え1位に立ち、吉居も必死でついて行きます。さらに3位の青山・太田も区間記録を上回るスピードで間隔を詰めてきます。
10キロで東国・ビンセントは国学院・藤本をかわしトータル8人抜きで4位に浮上します。
14キロ過ぎ、青山・太田の力強い走りは衰えず一気に先頭に立ちます。
15.6キロの酒匂橋付近から駒澤・鈴木と青学・太田は激しく先頭争いをしますが、中央・吉居はついて行けずその差20mまで遅れます。
4位を走るビンセントの15キロ地点は区間記録より45秒速いペースです。
18.5キロ、駒澤・鈴木は再度先頭を奪い、青学・太田は離れずついて行き、中央・吉居は120mまで遅れます。
19.3キロで太田がスパート、20キロ過ぎで大八木監督の激に鈴木も奮起しギアチェンジして再び逆転、そのままトップで小田原中継所に飛び込み、ほぼ同時にゴールした青学・太田が2位、3位は中央・吉居、4位に東国・ビンセント、5位、国学院・藤本と続きます。
区間賞はいうまでもなく区間新で走った東京国際・ビンセント。秋にふくらはぎを痛め、出雲、全日本を欠場し箱根でも不安がありましたが1ヶ月でみごとに復活、期待通り異次元の走りを見せ最期の箱根を3つ目の区間新で飾りました。
第5区
標高874mの山上りが待ち受け、多くの強者達が伝説を作ってきた最難関区間です。16.3キロで最高地点に到達すると芦ノ湖のゴールまで坂道が続きます。
2位とわずかな差で出発した駒澤・山川は当日エントリーで最重要区間を任された1年生です。秋の全日本4区で区間賞をとり監督の信頼をつかみました。
2位の青山・脇田も当日に急遽走るように命じられます。4年生で初めての箱根で期するものがありましたが思ったようにペースが上がらず3キロの函嶺洞門では駒澤・山川に100m以上離され、3位の中央・阿部が迫ってきました。
中央・阿部は前回も5区を走った経験者で腕が振れた軽快な走りを見せ4.2キロ地点で脇田を捉え2位に浮上します。
8キロ過ぎ、小雨が降ってきて気温がぐっと下がります。駒澤と中央の差は16秒差まで縮まリ、5位の国学院・伊地知が東国・川端を抜き4位浮上します。
12キロ付近の小涌園前、ここからが苦しい道程です。坂が得意の中央・阿部は15秒差まで詰めますが駒澤・山川も踏ん張ります。
3位の青山・脇田は遅れトップと1分19秒差まで開きます。4位、5位の国学院・伊地知と東国・川端は激しく順位を争います。
城西・山本が激走し区間賞ペースの走りで8人を抜き、順位を19位から11位に上げます。いい形の前傾姿勢がとれた走りです。
19キロ過ぎ、駒澤・大八木監督は山川に「36秒離さないと負けだぞ」と檄を飛ばします。
底冷えする芦ノ湖のゴール、駒澤・山川がそのままテープカット、駒澤は19年ぶり5回目の往路優勝を果たし明日の総合優勝に弾みをつけました。
2位は30秒差で中央・阿部が入り、総合連覇を狙う青山は2分3秒差で3位となり厳しくなります。
4位は国学院、5位に早稲田が入りました。11位で襷を受けた順大・四釜(しかま)が5人抜きの快走を見せ6位に順位を戻します。
区間賞は城西大学の山本で2020年東洋大・宮下の持つ記録を21秒も上回るみごとな走りを見せ、順位を13位から9位まで上げました。
山本は「昨年チームが出場できず悔しい思いをした。今年は箱根を絶対走るつもりで練習したので区間賞を取る自信はあった。応援する祖父を箱根神社の鳥居の前で見つけてガッツポーズで応えることができた」と満足そうに語りました。
往路の順位は次のとおりです。(括弧内は前年順位・11位以下略)
1.駒澤大学(3位)
2.中央大学(6位)
3.青山学院大学(1位)
4.国学院大学(4位)
5.早稲田大学(11位)
6.順天堂大学(5位)
7.東京国際大学(7位)
8.法政大学(13位)
9.城西大学(-)
10.創価大学(8位)
往路優勝の駒澤・大八木監督は「抜きつ抜かれつのハラハラのレースだったが選手たちがしっかり走ってくれた。この流れを明日につなげたい」とうれしさを抑えた口調でインタビューに応えました。
中央・藤原監督は「往路優勝を狙っていたので悔しいが選手は100%の走りだった。指導者の力量差が出た」と振り返り、青山・原監督は「山下りがカギで7・8区でうまく走って9区でトップにたてば逆転優勝は0%ではない」と復路での巻返しを誓います。
第6区
この日の芦ノ湖は青空が広がり風もなく穏やかな風景ですが、湖面には薄く氷がはり気温は氷点下1.8℃の寒さです。ゴールの大手町は10℃が予想されています。スタート付近では今年は各校の色とりどりの応援団が戻ってきました。
6区は芦ノ湖をスタートし4キロ過ぎから小田原まで874mを一気に下りますが急カーブではスピードコントロールが求められるコースです。
トップの駒澤は当日変更の伊藤、1年生ですが下りが得意なことを大八木監督に買われ起用されました。
8時に伊藤がスタート、30秒後に中央・若林、2分3秒後に青山・西川がスタートしました。西川は控えから急遽命じられ初めての箱根を走ります。
駒澤出発の10分後、15位の国士舘以下7チームが一斉にスタートしました。
5キロ地点で駒澤・伊藤は1年生らしからぬ走りで2位と43秒差、3位とは2分35秒差まで開きます。伊藤の父は山梨学院で箱根を目指しましたが出場できず父の夢を息子がかなえました。
8.3キロ、早大・北村が4位の国学院・島崎を抜いて順位を上げます。
9キロの小涌園前、青山・西川は調子が上がらず駒澤との差は3分30秒まで開きます。
12キロ、宮ノ下でも駒澤・伊藤は勢いに乗った走りを続け2位の中央若林と50秒差に開きます。
14キロ過ぎに,早稲田・北村が3位に浮上、青山・西川の足取りは重く16.5キロで国学院・島崎が抜き4位に上がります。
17キロの函嶺洞門では駒大・伊藤はすこし厳しい顔になりますが、高校の恩師を見つけるとガッツポーズして応えます。
駒澤・伊藤は120点の走りで小田原中継所に到着し、うれしい区間賞。中央・若林も必死で追いましたが47秒差で襷リレー、3位は早稲田・北村で花田監督は「北村ありがとう」と声を掛けました。
4位は国学院、青山・西川は法政、創価にも抜かれ7位に沈み最初で最後の箱根を走り終えました。西川は急遽代役に抜擢され準備不足だったことが悔やまれます。
区間賞の駒澤・伊藤は「緊張とワクワクが半分半分だった。先頭を走るプレッシャーは大きかったが選ばれた以上がんばろうと思った」と喜びを語りました。
第7区
前半は下りから平たんとなり後半は細かいアップダウンとなるコースです。
首位の駒澤・安原は軽快に走っていきます。前回、3区で区間16位とチームのブレーキとなった悔しさをバネにして1年間練習したといいます。
2位の中央・千守もしっかりとした走りですがトップとの差が少しずつ広がっています。
9.6キロ地点で3位、早稲田・鈴木と4位、国学院・上原が順位を入れ替えるも鈴木は上原について行きます。
11キロ付近で創価・葛西が区間賞を狙う走りを見せ早稲田に迫ってきています。葛西は全日本で2区を新記録で塗り替えた実力者です。
17キロ過ぎで国学院・上原がスパートし早稲田を離し、後方では明治・杉が力強い走りで10位に浮上します。
18.3キロの大磯では、駒澤・安原と中央・千守との差が少し縮まり、大八木監督が注意、中央・藤原監督も「残りの3キロに4年間の努力をかけろ」と檄を飛ばします。
平塚中継所、駒澤・安原が44秒差でトップで到着、2位中央・千守、3位は国学院、以下早稲田、創価、法政、順大、青山は1つ順位を落とし8位となります。
区間賞は創価・葛西と明治・杉の二人が同時に獲得しました。葛西は3週間前に左足を疲労骨折したことを明かしつつ「チームの流れを少しでもいい方向に変えたいと思い走った」と述べ、杉は「沿道の声援は経験がないもので背中を押してくれた。シード権内に引き上げることができた」と喜びを語りました。
第8区
初めは海岸沿いの平たんな道を走り16キロからの遊行寺坂の上りでスタミナを使い果たすと差がつく区間です。
先頭の駒澤・赤星は初めての箱根で快走していますが、大八木監督は「遊行寺坂までスタミナを保て」と指示、8キロもある上りに備えさせます。
3.4キロ、青山・田中は序盤を安定した走りで進み6位に浮上しました。
11キロ、赤星は区間記録を上回る走り、中央・中沢もハイペースの走りで駒澤との距離を少し詰めてます。
14キロ、6位争いの法政、順大、青山のうち、青山・田中はついて行けず脱落します。
14.7キロ地点、日差しがきつくなり体感温度は上がってきますが駒澤・赤星は依然安定した走りです。中央・中沢もこの時点では区間記録を4秒速いペースです。
駒澤・赤星は遊行寺坂に入りますが好走を続け、2位とのタイム差は40秒です。
戸塚中継所、赤星は2位中沢に1分5秒まで差を広げて襷リレーします。3位は国学院・高山、4位はほぼ同時の早稲田・伊福。
5位は法政・宗像で、11位の東洋大・木本とともに区間賞を受賞しました。7区に続き二人同時の区間賞です。
法政・宗像は「1,2年では走れず、3年でやっと走れ、区間賞を取れたのはうれしい。粘り強く走ることができた」と喜び、東洋・木本は前回4区で18位と悔しい思いをしたが「まさかという気持ちでうれしい、あとの選手に差を縮めてつなげてよかった」と語りました。
学生連合は8区の平成国際大の佐藤が必死に戸塚を目指しましたが、駒澤がリレーをして20分以内に到達せず今回初の繰り上げスタートとなりました。
第9区
9区は2区と同様に最長のコースで各大学のエース級が配置されます。権太坂の上り下りをどうこなすかがポイントとなります。
駒澤のキャプテン・山野はハーフマラソン学生記録保持者で、2位、中央・湯浅は前回も9区を3位で走った実力者です。連覇が厳しくなった青学は8番目に岸本がスタート、昨年7区を区間賞で走り近藤とともに青学のエースの一人です。
駒澤・山野、中央・湯浅とも序盤から落ち着いた走り振りです。
3.8キロ地点では早稲田・菖蒲、創価・緒方、国学院・坂本、法政・中園、順天堂・藤原の5人が3位争いをして走りますが、7キロ地点になると8位の青山・岸本が怒濤の走りで集団に迫ります。
7.8キロ、駒澤・山野は権太坂に入っても軽快な走りを続け、中央・湯浅との差を広げます。
8キロ過ぎ、青山・岸本は鬱憤を晴らすように一気に5人の集団を掛け抜いて行きました。
11キロでは順大が集団から脱落します。
13キロ付近、シード権争いは9位に城西・平林、東洋・梅崎が10位と権内に浮上し、明治・下条は11位の圏外に落ちます。
14.7キロ、横浜駅前では山野は区間記録を超える走りを続け、中央・湯浅は差を詰められません。
駅前の給水地点では激走する青山・岸本に走れなかったキャプテンの宮坂が水を渡して激励します。
20キロ過ぎ、駒澤・山野と中央・湯浅の差は500mまで広がり、逆転は難しくなります。
山野は最期まで好調な走りを保ち鶴見中継所に到達、アンカーの青柿にリレーし、2位、中央・湯浅との差は1分33秒、3位青学、4位創価、5位法政の順となりました。
青山・岸本は区間新を期待できる驚異の走りで、中継所直前では原監督も「去年の中村の記録を破って卒業しよう」と檄を飛ばしましたが惜しくも12秒遅れて新記録はなりませんでした。しかし今回の青山ではひとり気を吐いた立派な区間賞でした。
レース後、「3位集団が見えたとき全員追い越してやるという気持ちで走った。自分の仕事は果たせたが同期の中村の記録を越えられなかったのは悔しい」と語りました。
15位の山梨学院・高木は過去2年連続でつながらなかった襷をつなげることができ、18位の立教・中山は前回学生連合選抜で走った唯一の箱根経験者でしたが一つ順位を上げて襷をつなげました。
しかし19位の専修大・南里はわずか10秒、距離にすると60m足らずで襷を渡せず、アンカーの小島は学生連合・佐藤、国士舘・福井と共に繰り上げスタートとなりました。
第10区
選手が大手町に入ると多くの観衆が待ち受けその声援を浴びながら走る最終区間。過去には大逆転もありました。
トップを走る駒澤・青柿は2年連続のアンカーです。スタート直後に足を滑らせましたがとくに問題はないようです。大八木監督が「余裕を持って走れ。15キロからが勝負だ」と声を掛けると青垣は手を挙げ応えます。
中央のアンカーは4年生の助川ですが最初で最後の箱根となりました。これまで走れなかった悔しさをはねのけゴールを目指します。女手一つで育ててくれた母はいつも息子の競技会に応援に来てくれたとのエピソード。
青山のアンカーは3年連続の中倉で昨年は区間新記録を出しています。しかし駒澤との差は6分33秒差で逆転連覇は困難となりました。
5.4キロ、シードを確実にしたい10位の城西・山中が東洋・清野をかわし9位に上がります。
6キロ付近、1位駒澤・青柿と2位・助川の差は変わりません。7位で出発した国学院・佐藤が快走、早稲田を抜き6位に浮上、さらに5位を走る法政・高須賀に迫ります。
13.5キロの新八つ橋付近、駒大・青柿は口を開いていますが変わらない走りを続けます。普段はクールで落ち着いた性格のようです。中央・助川とは1分51秒差に広がっています。
17.9キロ、6位の国学院・佐藤が法政・創価を抜き4位に順位をあげます。
19キロ、駒澤・青柿は変わらず快調な走りです。大八木監督は「優勝も大事だが区間賞も大事だぞ」と最期の檄を飛ばします。中央・藤原監督も助川に「残り3キロで逆転できるぞ」と叱咤激励します。
21キロ、8位の順大のキャプテン・西澤がラスト・スパートし、一気に創価、法政、早稲田を追い抜き5位に順序をあげます。西澤は全日本6区で従来の記録を破る走りを見せています。
大勢の観衆が待ち、本来の箱根駅伝が戻ってきた大手町、ビクトリーロードに姿を現わした駒澤・青柿は、晴れやかな表情で3冠達成を意味するように指を3本立ててゴールします。
駒澤は2年ぶり8度目の総合優勝で、復路では一度もトップを譲らず危なげないレース展開でした。タイムは10時間47分11秒で歴代3番目の記録です。
総合2位は22年ぶりに3位以内に入った中央大学。1位との差は1分42秒。3位は青山学院、トップより遅れること7分14秒差で連覇は成りませんでしたが8位からの挽回はさすがでした。
以降4位国学院、5位順天堂大、6位早稲田大と続きます。
10区の区間賞は順大・西澤で「区間賞を狙っていた。前の走者を抜くという気持ちで走ったので結果は気持ちのいいフィニッシュだった。チームとしては総合優勝を目指していたが難しかった。何事も全力で取り組むことが重要であると思った」と語りました。
シード権争いでは6位の早稲田は2年ぶり、9位の城西は5年ぶりのシードを確保、往路で苦戦した東洋がなんとか10位に滑り込んでシード権を死守しました。
一方前回5位の東京国際はビンセント以外が振るわず11位、1区でトップを走った明治が12位、13位が前回9位の帝京でシード圏外に順位を落としました。
金栗杯(最優秀選手賞)は4区で区間新記録の東京国際・イエゴン・ビンセントでした。
第97回に続く2度目の受賞で、山の神と呼ばれた順大の今井と東洋大の柏原が3度の受賞をしていますが、複数回受賞者は3人目です。卒業後はホンダで陸上を続けパリ五輪を目指します。
復路の10位まで順位の次の通りです。(括弧は前年順位)
1.駒澤大学(9位)
2.中央大学(8位)
3.法政大学(7位)
4.創価大学(6位)
5.順天堂大学(5位)
6.東洋大学(2位)
7.早稲田大学(12位)
8.国学院大学(13位)
9.青山学院大学(1位)
10.城西大学(―)
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