西岸良平氏の「三丁目の夕日」と「鎌倉ものがたり」は、新刊が出れば真っ先に購入し愛読している私の大好きな作品です。
両作品とも、作者の人間性がにじみ出ている、暖かくヒューマニティに富んだ作品で、子供から大人まで楽しんで読むことができます。
その中で、「三丁目の夕日」は、1974年から「ビッグコミック・オリジナル」で連載が始まり、2020年現在、46年におよぶ長寿作品で、2月には連載1000回を達成しました。
そこで、人気漫画「三丁目の夕日」について解説します。
「三丁目の夕日」の舞台設定とストーリー
「三丁目の夕日」はまだ戦後が色濃く残る、昭和30年代の東京郊外の「夕日町三丁目」を舞台としています。
自動車修理業、鈴木オートの一人息子一平を中心として、鈴木家や、一平のクラスメートたち、駄菓子屋のおじさん、タバコ屋のおばあさん、ときにはネコや犬など夕日町に暮らす人々や動物たちのユーモラスな交流を、心和むエピソードとともに描きます。
そのなかで、宇宙人やUFO、不気味な怪人などの不思議な話や、貧困、差別、病いや死など人生における重いテーマもしっかりと描き、単なる「昭和ノスタルジー」ではなく、懸命に生きている庶民や動物たちへの、作者の暖かいまなざしが感じられる作品です。
「三丁目の夕日」は、2005年に「ALWAYS 三丁目の夕日」、2007年に「ALWAYS 続三丁目の夕日」として映画化されました。
鈴木家の父、則文には堤真一、母、トモエは薬師丸ひろ子、一平は小清水一揮が好演しました。
鈴木則文は原作と違い一本気の激しい性格にしたり、鈴木オートの従業員、六さんは堀北真希演じる女性の六子だったりと違うところはありますが、原作の雰囲気をうまく伝える作品となっていました。
また1990年から1991年にはアニメとしても放送されました。
主要な登場人物とキャラクター
「三丁目の夕日」には、多くの個性豊かな、愛すべきキャラクターが登場します。頻繁に登場する主要な人物を紹介します。
傑作作品の紹介
1000話の珠玉の作品集の中から、特に私の記憶に残っているお話を紹介します。
一平は世界の七不思議という本を読んで、「三丁目の七不思議」を決めようと思いつきます。そこで、サブちゃん、ユウちゃんら遊び仲間と話し合い、七不思議と決ったのは、
・誰もスイッチを押さないのに夕方になるとつく街灯
・元プロレスラー、サンタクロール説や、帽子を取ると電球や真空管がいっぱい光っているという噂がある怪人Xの正体
・数のわからないおばけ煙突
・学校の開かずの物置
・底なしの防空壕
・肉屋さんの上空に現われる空飛ぶ円盤
・甘党のネコ
でした。
一平たちはまず、防空壕の探検を始めます。深い洞窟をおそるおそる行くと、突き当たりに光が漏れる扉がありました。その扉を開くと思いがけない場所に出ます。さらに洞窟で道に迷っていると怪人Xが現われ「見たな-」と襲いかかります・・・(第4集)
きょうも一平、サブちゃん、ユウちゃんは広場で宇宙戦争ごっこをして遊んでいます。
気の弱いユウちゃんは楽しい遊びを考え出したり、自分の考えを持っている一平に憧れます。
そんなとき、クラスのホームルームで「給食を残すこと」についての討論をします。
クラス委員の榎本さんが「全部食べ終わるまで昼休みなしにしたらいい」と意見をいうと、先生から指されたユウちゃんもおどおどと「榎本さんと同じ意見です」と言ってしまします。
ところが、一平が手を上げて「嫌いな食べ物を無理強いするのは良くない。むしろ残さないようにおいしくしてほしい」と持論を述べ、皆の喝采を浴びます。
ユウちゃんも思わず拍手してしまうと、帰り道、怒った榎本さんに「あんたは一平君の金魚のふんね」と言われてしまいます。
そのことを気にしたユウちゃんは、その日、一平たちと遊ぶことをやめますが、一人でさびしく広場で遊んでいると、不審な男が近づいてきて・・・。
子どもたちにも、大人と同じ様に傷つけられたくないプライドがあるという話です。(第19集)
夏休みのある日、一平はサブちゃんらと夕方暗くなるまで遊び、帰りにひとり原っぱを通ると空飛ぶ円盤が着陸、中から宇宙人が出てくるところを目撃します。
翌日、一平が学校に行くと、見たことのない少年が同じクラスにいるので、クラスの女の子に「あいつ誰」と聞くと、「前から同じクラスの江入庵君じゃない、忘れたの」と言われます。
一方、担任の山村先生は、47人のクラスのはずなのに数えると48人いるのですが誰が余分なのかわかりません。
学校からの帰り道、一平は、江入庵君に声をかけると家に誘われ、不思議な機械を見せられます。
一平が「君は宇宙人だろう?」と追求すると、江入庵は「遠い未来からパパの転勤でやって来た」と正直に答えます。
一平は持ち前の人懐っこさから、時代の壁を気にせず、すぐに仲良しになりますが・・・(第30集)
一平はいつものようにサブちゃんたちと夕方遅くまで遊んだあと、宝の山と呼んでいるゴミ廃棄場で、壊れたメーターや真空管などを拾って家に帰りますが、そのあと不思議な事が連続して起こります
帰宅が遅れると叱るはずの母が、ニコニコしてやさしく声をかけるので変だなと思います。
また次の日、宿題を忘れて学校に行くと、いつも廊下に立たされるのに、先生はやさしく注意するだけなので一平は首をひねります。
その帰り道、いつも嫁姑でけんかをしている家庭で仲良くしているのを目撃したり、街角では怪人Xが姿を現わし、一平はいよいよ、この町で何かが起こっていると確信します。
そして家に帰り、優しい表情の母をみると、頭にアンテナみたいなものが付いていて・・・ 。
宇宙人の侵略から地球を守る一平たちの活躍を描きます。(第36集)
一平のクラスの耕太郎の父は毎日酒浸りで、酒がなくなると買ってこいと母を怒鳴りつけます。
母も言い返し夫婦げんかが絶えず、耕太郎に当たり、夜遅く酒を買いに行かされます。
暗い夜の道すがら「お父ちゃんなんか、いつも酒飲んでだらしないから大嫌いだ。お母ちゃんは、すぐにヒステリーをおこして僕をぶつからもっと大嫌い」と思う耕太郎でした。
途中、耕太郎は家族で笑い合っている一平の家をのぞいて、うらやましく思います。
そのうち、目当ての三河屋さんに着きますが、すでに閉まっていて、母から三河屋さんが閉まっていたら隣町まで買いに行きなさいと厳命されていたのでまた夜の道を歩き出します。
すると怪しげな夜店に出会い、不思議な魔法のロボットを見せられます。
耕太郎は誘惑に負け、酒代のお金でそのロボットを買ってしまうと、家に帰って、父と母にぶたれるシーンが頭に浮かび、このまま家出しようかと思います。
しかし当てもなく暗い夜道をさまよううちに不気味な狐火が現れ・・・。
「家は子供にとってどんな家であろうと、唯一の帰る場所」と作者は言います。
子供の悲しみと救いを描いた秀作です。(第38集収録)
「三丁目の夕日」とは?西岸良平の世界について・まとめ
以上、「三丁目の夕日」を紹介しました。
「三丁目の夕日」の魅力は、爽やかな読後感です。
出会いや別れ、友情、親子・兄弟・姉妹の絆など共感をよぶテーマと貧困や、差別、虐待など現代的問題もリアルに描き、読者の心をざわつかせますが、最終的には救いと希望を用意しているからでしょう。
また、SFやサスペンス、オカルト的ストーリーなど、多彩な物語も読者を引き込みます。
「三丁目の夕日」は暖かく、心安まる作品ですので、まだ読んだことのない方には是非おすすめしたいコミックです。
コメント
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