カレーライスは日本の国民食です。
子供たちの大好きな食事で、学校給食でも人気NO.1のメニューです。
カレーはインドから伝わったと私たちは常識で知っていますが、本当でしょうか?
カレーはどのように日本で広まり、国民食となったのでしょうか?
カレーは身体にいいのでしょうか?
など、カレーに関する情報を調べて見ましたのでおつきあいください。
カレーはまずインドからイギリスへ伝わった!
カレーとは、5000年以上前の古くから、インドや南アジアで作られていたスパイスを使った料理全般のことです。
15世紀、インドにやって来たポルトガル人がそこで見つけたスパイシーなシチューを、現地のタミル語の「ソース」を意味する「Kari」という言葉から、ポルトガル語で「Carel」(カルレ)と名付けました。
17世紀にイギリスがインドに進出すると、これが英語化され「Curry」(カレー)と変化しました。
18世紀、イギリス領インドのベンガル州知事ウォーレン・へースチングス(後の初代インド総督)がスパイスと米をイギリスに持ち帰り、紹介したのがイギリスでのカレーの始まりとされています。(異説があります)
当初はインド帰りの役人の間の高級な食べ物でしたが、イギリスのC&B社(クロス・アンド・ブラックウェル)という食品会社がカレー粉を商品化して売り出すと、イギリス人の食生活にあっという間に広がりました。
ヴィクトリア女王にも献上され、上流階級にも浸透するようになります。
イギリスの権威ある辞典「オックスフォード大辞典」には、1810年に「カレーパウダー」として登場しました。
また、イギリスから植民地を含めた海外にも輸出されると世界に広がりますが、フランスでは「インド風ソース」と呼ばれました。
日本人とカレーとの出会いは?
カレーという言葉を初めて日本に紹介したのは、福澤諭吉で1860年(万延元年)に出版した英語の辞書「増訂華英通語」の中で「Curry」をコルリとして記載しています。
カレーを初めて見た日本人は、1863年(文久3年)、フランスのナポレオン3世に会うために幕府より派遣された使節団で、船の中でインド人がカレーを食べているところを見ています。
使節団の随行員で、後に東京大学医学部長となった三宅秀(ひいず)の日誌に、「飯の上に、唐辛子を細身にして、芋のドロドロしたものをかけ、手でかき回して手づかみで食べている。実に汚い人だ」と書いています。
カレーライスを初めて食べた(?)日本人と言われるのは、会津白虎隊の生き残りで、後に東大総長になった日本最初の物理学者、山川健次郎で、1870年(明治3年)に米国留学に行く船上でのことですが、実は食べたのはご飯だけでカレーの部分は「食う気になれず」と回想録に残しています。
同時期の1870年(明治3年)のころ、イギリスC&B社のカレー粉が日本に輸入されたようで、この頃が日本のカレー文化の出発点ということになります。
1872年(明治5年)に発行された「西洋料理指南」(敬学堂主人)、「西洋料理通」(仮名垣魯文)という料理本には、カレーライスがレシピとともに紹介されています。
国内でカレーはどう普及した?
カレーの日本国内でどのように普及していったのでしょうか?見ていきましょう。
兵食への採用
1873年(明治6年)、陸軍幼年学校の土曜日の昼食メニューにカレーライスが加えられたといいます。
海軍では1908年(明治41年)に発行された「海軍割烹術参考書」に「カレイライス」の調理方法が記載されています。
日本海軍はもともとイギリス海軍を手本として創設されましたが、兵食においても、イギリス流のカレーを採用しました。
当時海軍は慢性的な栄養不足から来る脚気に悩まされており、カレーは栄養価において、もってこいのメニューだったのです。
陸軍も1910年(明治43年)に編纂された「軍隊料理法」においてレシピ集の「洋式ノ部」にカレーライスが取り上げています。
カレーが軍隊食に採用されると、田舎から出て来た若者が除隊後、調理方法を家に持ち帰り、家族に食べさせたことで、全国にカレーライスが広がったと言われています。
学校食への採用
一説では1876年(明治9年)札幌農学校の教頭に就任したクラーク博士が、「ライスカレーの名付け親」とか「日本のカレーライスの発祥は札幌農学校」と言われています。
しかし、北海道大学は、ホームページで「クラーク博士とカレーを結びつけるはっきりとした史料は残っていず、「ライスカレー」の名称についても「北海道開拓史の東京出張所では、すでに明治5年に御雇い外国人の食事のために、コーヒーや紅茶、タ(ラ)イスカレーを用意していたとの記録がある」としています。
しかし、農学校の食品買入れ記録にカレーの記載があり、札幌農学校で「ライスカレー」が出されていたことは間違いないようです。
学校給食が本格的に始まったのは戦後で、学校給食でのカレーのメニューがカレーの全国的普及に拍車をかけました。
1982年(昭和57年)全国学校栄養士協議会が1月22日の給食をカレーにすることに決め、全国の小中学校で一斉にカレーが出され、以来1月22日を「カレーの日」とされました。
日本製カレー粉・カレールウの登場
カレー粉はカレー用に調合したスパイスであり、カレールーは、カレー粉に、出し成分や油成分、小麦粉などを調合したものです。
明治時代、C&B社のカレー粉など輸入カレー粉は高価で、なかなか手に入らなかったので、国産カレーを作る会社が出てきました。
日本製カレー粉が初めて登場したのは1905年(明治38年)です。
大阪の薬種問屋「大和屋」(現ハチ食品)の二代目今村弥兵衛は、商いで扱っていたウコンや唐辛子を主原料として、国産初のカレー粉「蜂カレー」を発売しました。
1923年(大正12年)には日賀志屋(現エスビー食品)も販売を開始しました。
1931年(昭和6年)、国産カレー粉が販売される中で、やはりイギリスC&B社のカレー粉が最高級とされていましたが、C&B社のカレー粉の缶に国産品を詰めて販売するという、偽装事件が起こりました。
ところが、日本製品に詰め替えられても味は同じではないかという評判が立ち、日本製カレー粉に注目が集まるようになりました。
一方、カレールーは、1926年(大正15年)、ハウス食品がカレー粉と小麦粉などによるカレールーを「ホームカレー粉」という名前で販売しました。
1945年(昭和20年)、オリエンタルが発売したのは、カレー粉に牛脂やバターで炒めた小麦粉を加え、調味料も入ったカレー粉で、本格的ルーでした。
1950年(昭和25年)、製菓メーカーのベル食品が板チョコに見立てたカレールーを発売し、大ヒットとなります。固形カレールーの始まりです。
このように安価な国産カレーが市場に流通し、ご飯にかけるだけの手軽さで、庶民にとってちょっとした贅沢感を味わえたカレーライスは、一般家庭の定番料理として定着するのです。
即席カレーの始まり
1906年(明治39年)、東京神田の一貫堂からは「カレーライスのたね」が発売されます。
熱湯をかけるとカレーとなる肉やカレー粉が固定化されたもので、インスタントカレーの元祖と呼ばれました。
1969年(昭和44年)、大塚食品は温めて掛けるだけの日本初のレトルトカレー「ボンカレー」を発売し、その後、レトルトカレーの花盛りの時代が始まり、現在は3000種類が販売されていると言われています。
レストランでの提供
外食でカレーが提供されたのは、1886年(明治19年)神田の丸久という店で9銭でだされたのが最初とされています。(詳細不詳)
1910年(明治43年)創業の西洋料理店、大阪・自由軒はご飯とカレーを混ぜた「名物カレー」を考案したところたちまち人気メニューとなっています。
1927年(昭和2年)、新宿中村屋は「純印度式カリー」を販売します。そのきっかけとなったのはインド独立の志士ボーズを経営者の相馬夫妻がかくまい、長女がボーズと結婚したことでした。スパイスをふんだんに使った本格インドカリーは飛ぶように売れたと言うことです。
1928年(昭和3年)、東京・銀座の資生堂パーラーはレストランを開業しますが、人気メニューは「カリーライス」で、当時としては珍しくご飯を別盛りにし、薬味にショウガ、福神漬け、ラッキョウを添えています。
1929年(昭和4年)、世界初のターミナルデパート阪急百貨店に大食堂がオープン。その目玉がカレーライスでした。当時高級だったカレーライスを安い価格で提供したため、爆発的な人気を呼び1日に1万3千食も売れた事もあったようです。
日本でのカレーの進化は?
カレーは、他の洋食と同じくハイカラ好きの富裕層の間で食されていた高級料理でしたが、やがて庶民の中にも広がっていきます。
洋食人気が高まると和食は衰退していくのですが、そんな中で既存の和食に西洋料理を組み合わせるという工夫が生まれてきます。
カレーは海外から渡来したほかのいろいろな文化と同様に、日本の文化の中で定着、融合し、そして新しい食べ物も生まれました。
カレーうどんもその一つで、1904年(明治37年)、東京・早稲田の三朝庵で出されました。
カレー南蛮も、三朝庵の考案とされていますが、2018年(平成30年)7月31日残念ながら閉店されました。
カレーうどんとカレー南蛮の違いは、麺がうどんかそばの違いと、後者には必ずネギが入っていることです。南蛮とはネギのことなのです。
カツカレーは1918年(大正7年)、洋食屋の河金で出されたのが最初とか、あるいは1948年(昭和23年)に銀座スイスという洋食屋でプロ野球選手の千葉茂が特別注文したのが初めてとか、言われてています。
カレーパンは1927年(昭和2年)、東京江東区の「名花堂」(現カトレア)、あるいは1934年練馬区で創業の「デンマークブロート」が発祥と言われています。
スープカレーは1971年(昭和46年)、札幌で生まれ、全国に広がりました。
札幌市中央区の喫茶店「アジャンタ」が出した「薬膳カリィ」が日本最初のスープカレーと言われ、スパイシーなスープに、大きなジャガイモや骨付きチキンなどがごろごろと入っていて、ご飯は別皿で食べます。
カレーの効能と成分は?
「嫌いな人はいない」と言われるほど、子供から大人まで、年代・性別問わず愛されるカレーですが、美味しさはもちろんのこと、実は健康に良いパワーを持っています。
カレーは食べる漢方薬とも言われ、そのスパイスは、漢方薬として使われているものが多く、それぞれ健康への効果が期待されています。
特に「ストレス抑制」・「代謝促進によるダイエット効果」・「血液循環促進」・「脳細胞活性化」に効果があるようです。
その効果の源である、カレー粉によく使われるスパイスの特徴を、含有割合(文末の参考論文「カレーの機能性」より借用した目安です)順に紹介します。
ターメリック(18%)
カレーの黄色い色付けに欠かせないターメリックですが、別名「ウコン」です。
ウコンに含まれる「クルクミン」は、発がん抑制作用のほか肝機能を向上させ、コレストロール値の低下、脳機能の活性化によりアルツハイマー病の予防にも効果があることが報告されています。
コリアンダー(17%)
苦味成分を持ち、後味さっぱりのカレーにします。昔から消化を助ける胃薬や整腸として利用され、食欲増進にも役立つと言われています。
クミン(11%)
カレー特有の香りの元となるのがクミンです。高い抗酸化作用があり、老化防止、肥満抑制効果、消化促進の作用があると言われています。
フェヌグリーク(10%)
メープルシロップの香りと若干の苦みを持っています。アンチエイジング、強壮、健胃などに効果があります。
トウガラシ(カイエンペッパー)(6%)
強い辛味の成分「カプサイシン」は、抗酸化作用を持ち、動脈硬化や心筋梗塞の予防に効果があり、体脂肪を燃焼させダイエット効果もあります。
カルダモン(3%)
「スパイスの女王」、「香りの王様」と言われ、甘くエキゾチック、そして爽やかな香りが特徴で、高価な香辛料として知られます。カレー粉の主な原料の一つでストレス改善効果があるとされます。
ブラックペッパー(3%)
抗酸化作用、抗がん作用があり、新陳代謝を高め、食欲増進、疲労回復などの効果があります。
ガーリック(?)
滋養強壮のスパイスの一つで抗菌作用もあり、免疫を高める効果もあると言われています。
成分の「アリシン」は疲労回復に役立つ成分で、ビタミンB1との相乗効果も期待でき、ビタミンB1が豊富な豚肉や大豆製品と一緒に摂るのがおすすめです。
カレーとはどんな食べ物?歴史と効能は?まとめ
今や日本の「国民食」とも呼ばれるカレーの歴史と、日本国内での普及や健康への効能を見てきました。
インド生まれのカレーは、日本へはイギリス経由で伝わったため、インド風カレーのスパイスが強く、さらさらカレーではなく、イギリス風の小麦粉でとろみをつけ、子供にも抵抗のない辛さのカレーが主流でした。
このことも、大人から子供まで、カレーが好まれた理由かも知れません。
カレーライスは大人にとっても、子供の時の思い出が詰まっている料理です。
カレーライスを子供たちと食べる時、まだ若かった父母や、兄弟、食べながら見たテレビ番組など子供の時代を思い出しませんか?
そういう意味でカレーは、大人にとって少しセンチメンタルな食べ物でもあるのです。
ですから、子供たちには是非たくさんカレーライスを食べさせてくださいね。
参考:カレーのヒミツ(全日本カレー協同組合)、カレーの機能性(藤江歩巳、大羽和子)
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