箱根駅伝2024・新時代幕開けの戦い、その結果は?

スポーツ

2024年1月2日午前8時、大手町スタート地点、天候は曇りでほぼ無風、気温5℃と真冬の気温でしたが、コロナ規制が全面撤廃されこの数年で最多の人々が訪れ熱気に包まれていました。

前日夕刻に起こった能登半島地震の被害状況がはっきりしないなかで競技の延期も危惧されましたが、予定通りの開催となりました。

スタートラインにシード10校、予選会から勝ち上がった13校の選手が並ぶと首都の中心に号砲が響き、記念すべき箱根駅伝・第100回大会がスタートしました。

今年は記念大会として予選会に関東学生連合加盟大学以外にも門戸を開き、例年の関東学連選抜チームはないものの本戦には3校を増やして合計23大学が参加しています。

1920年に世界で戦える選手の育成という目的で金栗四三らが創設した「箱根駅伝」ですが、2024年大会は104年目、100回という記念すべき大会です。くしくもこの夏に開催されるパリ五輪のマラソンの代表3人はすべて箱根を走った選手(大迫選手は現時点で候補)で金栗四三の思いに一歩近づきます。

そのような新時代の幕開けとなる大会ですが、この日のために厳しい練習に耐えて抜いた選手たちが夢をかけて激走しました。

新春の国民的スポーツイベント、2024年箱根駅伝の結果についてまとめました。

優勝候補・駒大を引きずり降ろした青学、プライドの勝利

昨年は直前の出雲駅伝、全日本学生駅伝を勝利し実力ナンバー1と目された駒大が、戦前の予想通り隙のない盤石な走りを見せ往路・復路とも制し2年ぶり8回目の総合優勝を勝ち取りました。史上5校目の学生駅伝3冠という勲章も手にしています。

駒大の好調は今シーズンも続き、出雲、全日本学生も連続して勝利し、その内容も両大会で区間賞7個という圧倒的な強さで他大学を寄せ付けませんでした。ですから「駒大1強」は今回の箱根を予想する枕詞となったのです。負けん気の強い青学・原監督からも「今の駒大は最強軍団、青学は準優勝でもいい」などと兜を脱いだかのような言葉が聞かれたのも理解できる事でした。

しかし一方では「箱根は何が起こるかわからない」、「走ってみなければわからない」と繰り返し言われてきたことも事実です。駒大優位の中で、常に厚い選手層を育ててきた青学、近年力をつけてきた国学院、吉居兄弟という実力者を擁する伝統校の中央大も虎視眈々と頂点獲得を狙ったはずです。

原監督が恒例の作戦名に「負けてたまるか大作戦」と名付けたのも、この10年で6回制覇したというプライドの現われでした。

そして2日間の戦いの結果は...

駒大の連勝はならず青学の圧勝でした。箱根の覇者へ堂々たる返り咲きです。

ただ、多くのファンにとっては予想外の結果、番狂わせという驚きよりも、やはり箱根は走って見なければわからない、そして、やっぱり青学が来たのかというのが実感だったのではないでしょうか。

青学のレース展開は、1区荒巻は区間賞の走りをした駒大・篠原と35秒差の9位でしたが、2区黒田が駒大のエース鈴木を22秒差まで追い上げ区間賞を受賞。3区の太田は駒大の学生NO1の呼び声が高かった佐藤を終盤に捉え、並走して初出場の佐藤の動揺を誘い4秒差でトップを奪います。

さらに4区では佐藤一世が力走、2位の駒大に1分26秒まで差を開き、5区若林の山登りにつなげました。そして復路では先頭者利得を発揮、盤石な走りを続け2位駒大に6分35秒の大差をつけてゴール。3区から最終10区まで、1位青学、2位駒大の順位は変わらず、駒大は1秒も詰めることないまま両者の勝負は終結したのです。

青学の区間賞は2区、3区、4区、8区、9区の5区間、2位は3区間、駒大の区間賞は1区の1区間のみ、2位は2区間とレース内容も青学が圧倒した結果となりました。

一方、2位となった駒大は1区、2区、3区に実力者を配し圧倒して逃げ切る勝利の方程式が1区こそ篠原が区間賞の走りでシナリオどおりでしたが、3区でトップを譲ってからはチーム内に青学に負けるかもという弱気の心理が広がったようで、青学を追う走りに駒大らしい力強さが欠けました。

そのようなチーム全体の雰囲気を立て直すチャンスは時間をおいた復路の6区のはずでしたが初出場の2年生には重責すぎ区間12位と力を出せず青学との差は拡大して勝負は決しました。怪我で調整遅れだった前回区間賞の伊藤が出場できていれば違った展開になったかも知れません。ただ総合タイムは前回の優勝タイムから49秒遅れにすぎず、青学の強さを讃えるべきでしょう。

3位は城西大学で、前回は9位、秋の出雲が3位、全日本5位と両レースとも過去最高順位となり、箱根でも過去最高位3位を目標に掲げみごとに達成したのです。レース内容は2区で5位に後退した以外全区間で3位をキープ。往路にチームの実力者を配置し5人が区間一桁順位の走りで貯金をつくり、復路を逃げ切りました。とくに5区の山本は期待通り前回に続く区間新の走りで箱根MVP・金栗杯を受賞、チームの好成績に貢献しました。

4位は前回10位と沈んだ東洋大で復活の契機をつかみました。今シーズンも出雲が8位、全日本が14位と低迷。今大会ではシード権確保も危惧され、1区では15位とその心配どおりになるのかとも思えましたが2区梅崎から挽回、4区の松山が区間2位の走りで4位に浮上するとそのまま順位をキープ。前を走る城西には届きませんでしたが9区で初出場の吉田が区間2位の走り、10区では3大駅伝初出場の岸本が気を吐き区間賞の走りで4位を守り切りました。

5位は優勝候補の一角とみられた国学院。1区17位という思わぬロースタートが響いたといえますが、2区の平林が8人抜きで9位に浮上。1区と5区を例外として区間10位以内の走りで挽回して総合5位に食い込みました。前回の4位から一つ順位を落としたものの出雲4位、全日本3位、箱根5位と強豪校として定着しつつあります。

一方、前回2位で箱根制覇を目指した中央大学は思わぬ不振で13位に沈み、シード権を失う波乱となりました。1区が19位で、2区を走ったエースの吉居大和は夏にコロナ感染、脚の不調などで練習不足が響き振るわず区間15位、4区の主将・湯浅が盛り返し、7区準エース吉居駿恭が踏ん張って区間賞の走りをして10位を維持するものの後続が失速、3年ぶりのシード落ちと不本意なレースとなりました。

今年は多くの選手が直前にインフルエンザにかかり調整に苦しんだ大会でもありました。青学、国学院、中央大、山梨学院などはチーム全体が罹患しレースに大きな影響をあたえました。もともと寮生活や合宿などで集団感染の危険はありましたが各チームは感染症の蔓延防止には万全の体制をとっていたはずです。コロナ開けで国民的な免疫低下の影響が大学にも及んだのでしょうか。

23位までの総合順位は次のようになりました。

(括弧内は前年順位)

 ①青山学院大学(3位)     ⑪東海大学(15位)

 ②駒澤大学(1位)       ⑫国士舘大学(19位)

 ③城西大学(9位)       ⑬中央大学(2位)

 ④東洋大学(10位)       ⑭立教大学(18位)

 ⑤国学院大学(4位)       ⑮日本大学(―)

 ⑥法政大学(7位)        ⑯日本体育大学(17位)

 ⑦早稲田大学(6位)       ⑰順天堂大学(5位)

 ⑧創価大学(8位)        ⑱駿河台大学(―)

 ⑨帝京大学(13位)       ⑲中央学院大学(―)

 ⑩大東文化大学(16位)     ⑳明治大学(12位)

 ㉑神奈川大(―)        ㉓山梨学院大学(14位)

 ㉒東京農業大学(―)

帝京大、大東文化大が新たにシードを確保、帝京は2年ぶり、大東大は2015年以来9年ぶりのシード。前年2位の中央大学は13位、5位の順天堂大学は17位と振るわずシード権を失いました。両校とも優勝10回以上の古豪、次回の復活が期待されます。

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