2020年1月2日、3日、いまや日本のお正月の恒例イベントとなっている第96回の箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競争)が行われました。
ことしは1920年第一回から百年目の大会。(ただし戦争の影響で中止の年があり100回大会は4年先です)
しかも令和初の、しかも東京オリンピックイヤーの大会でした。
東京オリンピックのマラソン代表選手となった中村庄吾選手(駒澤)、服部勇馬選手(東洋)、そして選ばれるであろう大迫傑選手(早稲田)も箱根駅伝で活躍した箱根OBです。
歴史を紐解くと、箱根OBでオリンピックメダリストは1936年ベルリン大会で明治大学の南昇竜選手(朝鮮半島出身)が3位となっています。
是非、3選手にはこれを超えるメダルを取ってもらいたいですね。
もともと「箱根から世界へ」という目標で創設された箱根駅伝ですから、もし東京オリンピックでメダリストが誕生すれば、箱根駅伝創設に尽力した金栗四三氏もさぞ喜ばれることでしょう。
2020大会はハイスピードのレースで新記録が続出する中、終始レースをリードした青山学院大が底力を見せつけ圧巻の勝利でした。
今後、ライバルの東海大学、東洋大学などは青山学院大学から覇権を奪取するために、高速化に対応する戦略の練り直しが必須となるでしょう。
箱根駅伝の魅力とは
いまさらの話ですが、なぜ箱根駅伝は面白いのでしょうか?
興味のない人にはおそらく理解できないでしょう。
しかし、一度でも新年の二日間テレビの前で観戦すると、箱根駅伝に、はまる人は多いと聞きます。
筆者もその一人で、10年程前に人のすすめで見て箱根駅伝の面白さに夢中になり、以来、毎年この二日間は、テレビの前から微動だにしません。
箱根駅伝はどちらかというと、年齢を重ねた人、人生経験豊富な人ほど箱根の面白さがわかるといいます。
なぜなら箱根に「人生」を感じるからです。
箱根駅伝は、普通の若者の一年間、あるいは二年間、三年間の、必死で努力してきた成果であり、挫折や喜びの結晶なのです。
マラソンと違いチームプレイの競技です。選手は大学の名誉をかけて走ります。
しかし、ランナーには腹痛、脱水、転倒、足の故障、疲労骨折などトラブルは容赦なく起こります。
そのようなレースの中で、タスキをつなげることの重さ、タスキを途切れさせることのつらさ、切なさが見る側にひしひしと伝わってきます。
ただただ、母校のタスキを渡していくだけですが、箱根駅伝には作り物でないドラマ、筋書きのないドラマ、飾りのないドラマがあります。
ですから見る人は、走る選手に、感情移入し、自分の人生を重ね、共感を持つのです。
そんなドラマが二日間にわたり、東京・箱根間の風光明媚な自然を背景に展開されます。
しかし選手にとっては、難所の権太坂や勝負どころの箱根湯本から芦ノ湖までの山上り、復路の急激な山下り、遊行寺の急な上り坂、横から吹き付ける湘南海岸の海風、そして雪や雨の厳しい自然との闘いなのです。
2020年大会の結果は?特徴は?
今年の順位は?
さて、今年箱根を制したのは青山学院大学でした。
4連覇のあと、昨年、東海大学に連覇を阻まれましたが、再び頂点に立ちました。
シード権確保の10位まで見ていくと
優勝は青山学院
2位 東海大学
3位 國學院大学
4位 帝京大学
5位 東京国際大学
6位 明治大学
7位 早稲田大学
8位 駒澤大学
9位 創価大学
10位 東洋大学
という結果でした。
大会前の大方の予想では、昨年の覇者で、秋の全日本大学駅伝で優勝した東海大学を筆頭に、出雲駅伝で優勝した國學院大學、安定的な実力者の東洋大学、そして昨年復路優勝、総合2位の青山学院大学というように優勝候補が上げられていました。
結果を見ると、東洋大の予想外の不振以外は、ほぼ予想通りの結果と言えます。
高速レース
今年の箱根の特徴はハイスピードでのレース展開でした。
これまでの総合最短記録は、2015年の青学の「10時間49分27秒」でしたが今年の青山は「10時間45分23秒」、2位の東海も「10時間48分25秒」と、2校は過去の最短記録を更新しました。
10校が10時間台で走り13校がチーム記録を更新しました。
区間記録も7区間で13選手が記録を更新しています。
新興勢力の活躍と伝統校の不振
箱根駅伝参加や創部の比較的新しい大学が、上位に食い込みました。
國學院大(2001年初参加、最高7位)⇨3位
帝京大学(1998年初参加、最高4位)⇨4位
東京国際大学(2011年創部、最高15位、初シード)⇨5位
創価大学(1972創部、最高12位、初シード)⇨9位
といった新興勢力がめざましい活躍を見せました。
一方、かつて一時代を築いた伝統大学の凋落が際立ちました。
順天堂大(優勝11回)、中央大学(優勝14回)、日本大学(優勝12回)はシード権を逃しました。
2020大会 主要大学の戦略やレース展開は?
主要大学の戦いぶりやレース展開状況を見ていきます。
青山学院大学の返り咲きの勝因は?
青学は2019年大会で5年連続総合優勝を逃した直後、2020年大会を目指し再出発しましたが、4年生の卒業もありで大幅戦力ダウンと見られていました。
また外部からは正確に知ることはできませんが、原監督の言葉の端々から推測できるのは、新4年生のやる気の低下や不協和音がおこり、この一年、勝つための「君臨型」の指導スタイルに徹し、厳しい指導を行ったようです。
「理念の共有」と「傍観者にならない」、「他者責任にしない」を部員に徹底しました。その中で4年生が4人退部するなど血を流す改革を行っています。
部員たちも主将の鈴木選手を先頭に、初心に戻り、必死になって厳しい練習に耐え、夏合宿の頃にはワンチームを築き上げていきました。三大駅伝の出雲では5位だったものの、その成果が現われたのが全日本学生選手権で2位となり、ぎりぎり箱根に間に合ったようです。
そして箱根では、4区からトップを他校に譲らない圧勝でした。原監督と選手たちの優勝への執念が導いた勝利となりました。
活躍が目立った選手をあげると、
1年でエース区間の2区を走った岸本選手。淡々とした走りで6人抜きしチームをトップに押し上げ青学優勝の原動力となりました。岸本選手を2区に配置した原監督の采配の勝利でもあります。
4区の、箱根は最初で最後の4年生の吉田選手は驚異的な走りで区間新を記録しました。3年間走れなくても腐らず重ねた努力が花開いた瞬間でした。
吉田選手はこの箱根で陸上を引退する決意だったのですが、2月2日の別大毎日マラソンで日本人トップの3位と大健闘、今後の動向が注目されます。
9区を走った神林選手も、1年2年とエントリーされるも出場できなかった悔しさをバネに、また学部の必須カリキュラムでの5ヶ月間のニュージーランド学業留学をハンデとせず、区間賞の走りで青学優勝を確実のものとしました。
来年度の主将に内定しています。
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