安全衛生活動と経営改善活動、5Sで会社を変える!–私の中小企業経営(Ⅶ)

ビジネスと中小企業経営

安全衛生活動の重要性と経営者の役割

企業が永続的に発展していくためには、従業員が安全で、健康的に働くことができる職場を確保することが必須であることは言うまでもありません。

特に中小企業においては、労働災害は限りのある経営資源に損害を与えるとともに、会社全体の士気を落とすことになり、経営に対する影響は計り知れません。

したがって安全衛生活動は、企業にとって大変重要な活動で、ほとんどの大企業では専門部門をおいていますし、中小企業でも担当者を置いて活動に力を注いでいます。

実は、安全衛生活動は労働災害や従業員の健康を守るための活動であるとともに、従業員の仕事への士気を高め、仕事を効率的に行うことにつながり、生産性を向上させ、品質の高い製品を生産する、経営改善活動でもあります。

この認識を経営者が持つことが重要で、経営トップが安全衛生活動でもリーダーシップを発揮することが経営そのものの改善につながるのです。

 

 

 

 

 

しかし、企業の中には、例えば安全衛生部門の人材配置などで、安全衛生活動を軽んじる企業は大企業も含め意外なほど多数あります。

名前だけの安全衛生責任者になり、安全パトロールや安全衛生委員会に全く出席しないトップや最高幹部も存在しますし、悲しいことに製造業なのに、自分ひとりでは工場を見回ったことのない経営幹部もいます。

そういう経営幹部が、従業員に対して、いかに高邁な経営理論を説いて経営改善を指示しても、説得性はなく、現場の従業員はあたかも別の世界の人間を見るような目をして聞いていて、決して会社が良くなるはずはありません。

5S活動による経営改善活動とは

安全衛生活動が経営改善活動であるということは「5S活動」で理解することができます。

特に製造業では、「5S活動」は基本中の基本ですから、知らない人はいないと思います。

復習しますと「5S活動」は、「整理」・「整頓」・「清掃」・「清潔」・「躾」という5つの事項を組み合わせた活動です。

特に製造業においては、最初の3つの「整理」・「整頓」・「清掃」の行動の頭文字から3S」としてとして普及しました。

 

 

 

 

 

その意味するところは、次のとおりです。

・「整理」とは必要なものと必要でないものを明確に区別し、必要でないものは処分することで、今の仕事に必要な物だけを資産とすることです。

・「整頓」とは必要なものを、すぐに誰でも使える状態にしておくことです。

その要諦は「定位置」・「定品」・「定量」と表示による「見える化」です。

・「清掃」とは身の回りや職場に不用なものがなく、常にきれいな状態であることです。

清掃により従業員の「気づき」を高め、職場の細かい異常状態まで目が届くようになります。

3S活動は、その後製造業のみならず、全産業や公共施設、例えば病院などあらゆる組織体に広がる中で、「清潔」・「躾」という2つの要素を加え、「5S活動」としてさらに広がっていきました。

・「清潔」とは整理・整頓・清掃を継続し、誰が見ても、きれいでわかりやすい職場を維持することです。

・「躾」とは職場のルールや規律など、決められたことを全員が守れるように習慣づけることです。

「躾」は、さらに「人づくり」に力を注ぎ、人材を育成していくことまでも意味するようになりました。

5S活動の徹底により、職場が整然とし、清潔になれば、接触、転倒、落下をはじめ職場に潜む危険の芽を事前に摘むことができます。

そして職場の不安全状態が排除され、職場のルールが遵守されることにより、従業員が安全で健康的に仕事ができるようになり、さらには安全と経営改善の意識の高い人材が育成されます。

一方、5S活動により、作業中の材料などの物探しといった無駄な時間、物流ルートの阻害などによるマテハン(マテリアルハンドリング)ロス従業員の無駄な動き、設備や機械の故障や異常も減らすことができ、生産効率が向上します。

また不用材による職場スペースの無駄な占有がなくなり、適正レイアウトへの変更が可能となり、作業性の向上、倉庫費用の削減にも結びつきます。

すなわち5S活動により、工場内の作業がスピードアップし、生産性が向上するとともに、適正な在庫管理による資金負担が減少し、経営そのものが改善されることになるのです。

 

ところで5S活動の対象は「工場」だけではありません。

「オフィス」も5S活動の対象となります。

さらには「情報」や「仕事のやり方」にも5Sは広がります。

たとえば管理部門の財務情報や日々入手している営業情報などが、整理・整頓され、最短でタイムリーに経営トップまで伝達されると、迅速で適正な経営の意思決定に寄与することになります。

つまり、5S活動は単なる掃除や片付けではないのです。

5S活動は、従業員全員で、職場に内在する課題を見つけ、解決していくという組織的な経営改善活動なのです。

また5Sの利点は、方法としても、従業員全員が取り組むことができ、その成果も目で見ることができますので、従業員が一体感を共有でき、士気も上がるでしょうし、活動が継続できるツールと言えます。

5S活動での経営者、経営幹部の役割とは

さて会社が経営改革や改善を始めようとすると小難しい理論に走りがちです。

大企業でも、社長や最高幹部が立派な理論を振りかざして、経営改革を始めることがあるのですが、部下の幹部はお題目を唱えるように、さらに下の部下に繰り返します。

しかし、従業員の末端まで浸透することができず中途半端のまま終了することが多いのです。

そのえらい人がリタイヤすると、あっという間に廃れてしまうことはよく見られます。

その原因は、多くが理論と現場の実務とかけ離れていて、具体的活動方法と評価方法を明確でないので、従業員が腹落ちしないし、活動の成果もよく見えないからです。

要は現場を見ていないのです。

机上の空論ではなく、実際に現場で、現物を観察し、現実を認識した上で、改善を図ることが重要でこれを「三現主義」といいます。

一方、5S活動は、会社の現場に根ざし、成果が見えるので、どんな階層の従業員も容易に理解でき、いつまでも廃れることのない活動と言えます。

ただし、5S活動もやり方を間違えると、単なる清掃活動、形式的な自己満足的な活動に終わってしまいます。

まず経営者が5Sを理解して、「5Sを行うことで安全な職場を作り、生産性と品質が向上し、経営がよくなる」ということを自信をもって従業員に伝えることができないと決して成果にはつながりません。

特に中小企業では経営者が先頭に立って始めることがキーポイントとなります。

中小企業の経営者の皆さん、従業員の作業服が汚れていることを見逃していませんか?そういう職場だと思い込んでいませんか。

そこに不安全で不効率な作業方法や改善すべき職場環境が隠れているかも知れません。

是非、強いリーダーシップで安全衛生活動と経営改善活動を実行してください。



 

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