日本の各地で起こる連続殺人事件。事件の背後に謎の犯罪組織の存在を確信した週刊誌記者がその謎に挑む長編推理小説です。
価格:1,243円 |
連続殺人事件と謎の女 [ストーリー]
熱海海岸の自殺の名所、錦ヶ浦の断崖から新婚夫婦の夫が落下して死亡し、妻はホテルより失踪するという事件が起こります。
週刊誌記者 若宮四郎は、偶然にも評論家・島内への取材のため、同じホテルに宿泊していましたが、事件の前夜に不審な男が若宮の部屋を新婚夫婦の部屋と間違え、服を届けに来るという出来事があリ、夫が自殺したことに違和感を覚えます。
そこで警察を取材してみると、この二人が偽名を使って宿泊していたことがわかります。
若宮は、週刊誌記者としての第六感で、この事件は単なる自殺ではないと考え、調査を開始しますが、熱海の事件は序章に過ぎませんでした。
このあと北海道の小樽では3人が、名古屋、真鶴、岐阜でも殺人事件が立て続けに発生し、若宮は持ち前の行動力と推理で事件の関連に気づき、事件を追います。
一方、沈丁花の香りに包まれた謎の女性が、若宮の行く先々に現れて、事件に近づかないように警告しますが、若宮は逆に彼女に惹かれていきます。
やがて、若宮の活躍により、一見無関係な一つ一つの事件が、世間を騒がす、一つの大事件に収斂(しゅうれん)され、徐々に巨悪組織が姿を現します。
それは戦時中の謀略機関に源流を持ち、「大佐」と呼ばれる影の人物が操る犯罪組織でした。
そして、ついに若宮は、熱海駐在の実直な村田通信員の協力を得て、「大佐」の本拠地を突き止め、二人は真っ暗闇の中、富士山麓、青木ヶ原の樹海に乗り込みます。
「黄色い風土」の意味は [評価]
「黄色い風土」は、松本清張の推理小説の中では人気作品にあげられていません。750ページもあり、手に取りにくいのかもしれませんが、全編ドキドキ、ハラハラで、冗長感はなく、読み出したらやめられない小説です。
小さな疑惑、バラバラな事象が最後につながり巨悪をあぶり出すといった清張の得意とするストーリーで、例によって謎の美女も登場し、若宮との関係もどうなるのか気になります。私もこれまで4~5回読み直したおすすめの作品です。
「黄色い風土」とはどういう意味でしょうか?
乾いた、殺伐とした大地のイメージですが、緑豊かな平穏なこの社会の裏側で実は大きな犯罪が行われており、私たちは知らないだけで、本当の、この社会の姿は「黄色い風土」ということなのでしょうか。
清張作品のタイトルを深読みすることも面白いですね。
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