雪国の冬、早朝や深夜に、ごうごうと力強い音をたてて、降り積もった雪をかき分け、道を開いたり、道路脇に高く積まれた雪を削ったりしている除雪車両。
雪国以外の人にはあまり見られることはなく、なじみのうすい特殊な車両ですが、その雄壮な姿はあたかもモンスターです。
しかし雪国では、高速道路から国道、市道、歩道、それから空港、鉄道まで市民の交通を守る、なくてはならない車両なのです。
そんな除雪車両についてまとめましたので、最後までおつきあいください。
日本は豪雪地帯?今年の少雪の影響は?
ところで、我が国の日本海側は、世界有数の豪雪地帯だと知っていましたか?
例えば札幌市は、人口は190万人の大都会ですが、年間降雪量が6mもある豪雪節地帯に、これほどの人が暮らすのは世界でもまれな都市といわれています。札幌市は世界中の人口100万人以上の都市のなかでは一番雪が降る都市なのです。
また青森や富山、秋田も世界のトップクラスの豪雪地帯とされています。
しかし、今シーズンの冬は、全国的に降雪量が少ないようですね。
雪が少ないことは日常の生活にはありがたいことですが、雪国では降雪が地元の経済のサイクルに組み込まれており困る場合も多いのです。
テレビのニュースなどでも、地肌が見えて営業中止のスキー場の風景や、除雪業の人がせっかく新しく除雪車両を購入したのに仕事がないとこぼしている様子が報道されていましたね。
そのほか除雪車(機)メーカー、その整備会社、観光関係者などに経済的な影響がでるのです
少雪は地球温暖化が原因?今後の降雪量は?
今年の少雪は地球温暖化の影響なのでしょうか?
気象庁の見解では、地球温暖化が進行すると、やはり全国的には降雪量は減りますが、気温上昇にともなう水蒸気量の増加により、厳冬期の降雪は極端な大雪、いわゆるドカ雪は増える可能性があるということのようです。
したがって、普段降らないところに突然ドカ雪が降るため、雪への備えが難しくなるとも述べています。
確かに近年、特定の地域で大雪になり、交通が数日止まった事例を聞きます。
数年前、福井市内の大雪で数日間1000台以上の車がスタックしたことがありましたが、実は筆者もその1台に乗車していました。
例年より雪が少ないといっても、雪が降らないということではありませんし、ドカ雪は多くなるかもしれませんので、今後も雪国では除雪車の活躍が続くことは間違いありません。
除雪とは?車両の種類は?製造会社は?
除雪作業には
・雪を道路の脇に寄せたり飛ばして道を開く
・道の脇に高く積まれた雪をダンプに積み遠くに運んで排雪する
・路面に固まった雪で波打つ路面を削り整正して平らにする
・薬剤を散布して路面の凍結を防止する
などがあります。
作業によっていろいろな種類の除雪車が使い分けられるのです。
それではそれぞれの除雪車をみていきましょう。
ロータリー除雪車
除雪車のスターです。標準の300馬力の車両でも車体の長さは8m、幅2.2m、高さ3.5mもあり、近くから見ると大迫力の車両です。空港用の800馬力となるとさらにデカくなります。
専用車体の前部にオーガとよばれる回転式の羽根で雪をかき込み、ブロアといわれる羽根付きスクリューで吸い込んでシュートという伸縮装置で雪を飛ばします。最大40mも遠くに飛ばすことができます。
雪に埋まった道路で雪を飛ばして道を切り開いたり、道幅を広げたりします。また、道の脇に積まれた雪をダンプに積み込み排雪を助ける働きをします。
メーカーは国内では札幌の株式会社NICHIJOと新潟の新潟トランシス株式会社の2社です。2社で年間500台程度の生産を行っています。
凍結防止剤散布車
特に高速道路、空港などで路面の凍結防止のために塩化カリウムや塩化カルシウムなどの防止剤を散布する車両です。
トラックベースのシャーシに凍結防止剤を積んだホッパーと呼ぶボックスを装備し、車両後尾の円盤状の散布装置より走りながら散布します。
防止剤の状態により乾式のほか、飛散防止や路面への定着をねらった湿式、湿潤式の種類に区別されます。
シャーシはいすず自動車株式会社、UDトラックス株式会社、日野自動車株式会社などのトラックメーカーが製造します。
ホッパーを含む散布装置を製作・架装するメーカーは、NICHIJOと大阪の範多機械株式会社で、両社で年間400台程度の車両を供給しています。
除雪トラック
トラックの前方にスノウプラウという排雪板をとりつけ、雪を道路の脇に寄せて通路を確保するとともに、下部のブレイドという金属の板で路面の固められた雪を削り、波だった道路面を整正します。
除雪車両のなかで、スピードは一番で小回りがきく除雪車です。
シャーシはトラックメーカーが供給しますが、プラウとブレードを製作・取り付けるメーカーは福井の岩崎工業株式会社と札幌の協和機械株式会社です。
除雪グレーダー
幅の広い道路で,車体中央下部のブレードで路面の固まった雪を削り、波打った道路を平らに整正します。
前方に長いフロントフレームを持ったエイリアンのような形をしています。車体の先端にウエイトをつけブレードの押付力を強化するためです。
除雪グレーダーは排ガス規制に対応できず一時製造中止となりましたが土工用グレーダーをベースに、二人乗りという除雪車の安全性の原則の例外を認められ復活しました。
メーカーは株式会社小松製作所と米国のキャタピラー社から輸入しています。
除雪ドーザ
ホイールローダーの前部にスノウプラウを取付け、雪を押しだし道を開いたり、路面の整正作業を行います。
バケットを取り付けて排雪作業にも活用されます。
小松製作所、日立建機株式会社など建設機械メーカーが供給しています。
除雪車両の今後は?自動運転は?まとめ
地球温暖化でも、北国では雪が降り交通網の確保のため除雪の必要性は続いていくのでしょうが、今後、除雪車両はどう変わっていくのでしょうか。
キーポイントはオペレーター不足です。
除雪は、寒中の早朝と深夜の作業です。吹雪のなかでの作業も多い、大変な仕事です。
しかも早朝に出動するかどうかは直前の積雪状況しだいですから、お酒も飲めず待機しておく必要があります。また今年のように少雪になると出動も少なくなり、収入にも影響します。
ですから、若者でオペレーターのなり手が少なく、高齢化がかなり進んでいるのです。
一方、除雪作業は熟練の技術が必要とされていますので早めの後継者作りが必要なのです。
そこで考えられているのが除雪作業の省力化であり自動運転化です。
現在、国土交通省はi-Snow(Smart・Nice・Operation・Work)と称し除雪現場の省力化、NEXCOもICT(情報通信技術)を活用した除雪車両の運転支援システムの開発が進行中です。
どちらも準天衛星「みちびき」からもたらされる高密度の自車位置情報と高精度の地図情報を組み合わせモニター化した運転支援システムです。
現時点では一部自動運転が目的ですが、将来的には全自動運転を目指すとしています。
除雪の全自動化は乗用車と違って吹雪の中での操作もありますから、安全性の確保を含め、実現にはかなりの困難が予想されます。
しかし、これからも雪国の生活を守り続けるため、是非チャレンジしてもらいたいですね。
最後までおつきあいありがとうございました。
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