氷河期というと、私たちのイメージでは都市も、山も、海も氷におおわれる世界ですが、地球は、過去何回かその氷河期を経験したと言われています。
氷河期と温暖期が繰り返されてきましたが、現代の地球はどの時期にいるのでしょうか?
次の氷河期は、いつ来るのでしょうか?
また近年の地球温暖化の影響はあるのでしょうか?
調べてみましたのでおつきあいください。
地球史において今はどの気候にある?
私たちは「氷河期」(ice age)という言葉をよく使いますが、学会では「氷河期」という言葉は、「氷河時代」(ice age)と「氷期」(glacial age/glacial stage)の二つの意味に混同して使うことがあるため、使用は避けるべきとしています。
そこで、ここからは「氷河期」に替わり「氷期」という言葉を使うこととします。
さて、地球の歴史においては、
非常に寒冷な気候が続き、地球の広範囲な地域にわたって、氷の塊が陸地をおおった時代が少なくとも5回あったことがわかっており、この期間を「氷河時代」といいます。
その氷河時代の中でも、24億5千万年前と7億3千年前にあった地球の表面全体が氷に覆われる激しい寒さの期間を「全球凍結時代(スノーボールアース)」と言います。
また、2億年前、恐竜が大繁栄していた「ジュラ紀」や「白亜紀」など氷床がまったく見られない超温暖時代が「無氷河時代」です。
そういう歴史の中で現在は、グリーンランドと南極大陸に大きな氷床が存在する「氷河時代」に位置し、260万年前に始まりました。
地球温暖化が問題になっていますが、長い地球の歴史の中では、実は、現代は寒い「氷河時代」なのです。
この氷河時代の中でも、北極地域や南極だけでなく、中緯度の平地にも氷河が進出するような、特に寒冷な期間を「氷期」と言います。
また氷河時代の中で、氷期と氷期の間の比較的温暖な期間を「間氷期(かんぴょうき)」といいますが、現在はまさに「間氷期」に当たっています。
氷期はどんな環境?
一番最近の氷期を「最終氷期」、または「ヴュルム氷期」といいます。
約7万年前に始まり、約1万年前に終了し、間氷期に入りました。
「最終氷期」は、現在の平均気温より7度程度低く、中緯度に位置する海も山も凍結し、海水面は、世界中で約120m低下しました。
ヨーロッパでは、スカンジナビア半島など北半分の地域が氷河におおわれました。
北米では5大湖がすべて氷の下になり、ニューヨークまで氷河は広がりました。
セントラルパークで見られる有名な巨石の「羊背岩(ようはいがん)」や「迷子石」、西海岸のヨセミテ公園の「迷子石」は、この氷期に北米を覆った氷河に乗せられて山中から運ばれ、氷期が終わって残されたものです。
日本列島は、北海道と樺太、ユーラシア大陸とは陸続きとなり、東京湾、瀬戸内海も陸地となりました。
北海道の半分以上はツンドラ地帯となり、日高山地、そして本州の日本アルプスにも氷河が発達しました。
また北海道には、ユーラシアや北アメリカからマンモスもやって来ました。
この最終氷期は、約1万年~2万年前に終わり、間氷期に入りました。
気温は5~7度上昇し、氷床は縮小し、現在は南極とグリーンランドにのみ残りました。
ツンドラも極地に後退していきました。
海面は約100m上昇しました。
海水面の上昇を「海進」といいますが、日本では縄文時代でしたので「縄文海進」、あるいは調査地から「有楽町海進」ともいいます。
富山湾の埋没林もこの頃に水没しました。
「氷期-間氷期」サイクルと「ミランコビッチ理論」とは?
私たちの地球は、過去100万年間、この「氷期-間氷期」サイクルを、ほぼ10万年周期で繰り返して来たのです。
その1周期のなかでは、90%以上の時間をかけ、ゆっくりと氷期のピークに到達すると、氷期から急激に間氷期に移行し、折れ線グラフにすると「のこぎり型」の変化をすることが知られています。
このような地球の気候の周期を、天文学的に説明する理論を「ミランコビッチ理論」といいます。
セルビアの地球物理学者 ミランコビッチが提唱したメカニズムです。
ミランコビッチは、地球の気候の変動を太陽放射量の変化に求め、北半球高緯度の夏季日射量が減少すると氷期になり、日射量が増加すると間氷期になると考えました。
ミランコビッチは太陽放射量の変化に影響する要因として、地球の自転軸の傾き・公転軌道の離心率・歳差(さいさ)運動の3要素を上げました。
まず、自転軸の傾きは23.5度と言われますが、4万年周期で22.1度~24.5度の間を変化しており、傾きが大きいほど、夏はより暑くなり、冬はより寒気が強くなるのです。
地球の公転軌道は真円でなく楕円で、その楕円の度合いを離心率(楕円など円錐曲線を決める定数/0~1)といいます。
離心率が大きいほど公転軌道は楕円となり、太陽との距離に差が出て、気候に影響を与えることになりますが、この離心率の変動周期は10万年周期で変化します。
地球の自転においては、例えばコマの回転が弱まると、軸が傾き、首を振るように、軸が円形を描く「歳差運動(さいさうんどう)」を起し、自転軸の方向は、約2万年で一周し太陽から受ける熱量が変化します。
しかしながら、ミランコビッチが唱えた3要素の周期である2万年、4万年、10万年のうち、なぜ「氷期-間氷期」サイクルが10万年周期になるのかは、明確には解明されてはいませんでした。
ところが最近、ミランコビッチ理論に加え、氷床の大きさ、氷床下の地盤の隆起、二酸化炭素の温室効果を盛り込んだ計算モデルにより、10万年周期が説明できるという新しい研究が発表され話題になっています。
次の氷期はいつ来るのか?人類は生き残れる?
現在は、氷河時代でも比較的温暖な間氷期ですが、次の氷期は、いつ始まるのでしょうか。
前回の氷期が終わったのが7万年前ですから、10万年周期から言えば、およそ3万年後に氷期が到来することになります。
しかし、間氷期に入って現在1万年過ぎています。過去の実績をみると、ふつう間氷期は2万年で終わっているようです。
このことを重視すれば、1万年後には氷期が来ることになります。
しかし、今回の間氷期は、あと4~5万年ぐらい続くという説が有力です。
その理由の一つは二酸化炭素濃度上昇による地球温暖化です。
産業革命以降、大気中の二酸化濃度は増え続け、産業革命以前は280ppmの濃度は2018年現在400ppmに達しており、わずか250年足らずで1.4倍も急増し、温室効果により地球の平均気温は上昇中です。
これにより氷床の拡大が阻止され、氷期への移行が起きにくくなるといいます。
もう一つが、今の地球の公転軌道の離心率が40万年に1回という、特別に小さい時期に当たっていることです。
そのために、先に述べたように公転軌道が真円に近い時間が継続し、日射量が減らない期間が続くと予想されています。
氷期になると、厳しい気候に加え、人類が生きることができる地域も激減するため、人類存亡の危機を迎えるかも知れませんが、当面、そのような事態は、数万年、先延ばしになりそうです。
最終氷期には、旧人のネアンデルタール人や、人類の祖先であるホモ・サピエンスが、地球上に誕生し、厳しい氷期の環境を生きたのですが、ネアンデルタール人は滅亡し、ホモ・サピエンスは、生き残りました。
しかし、私たちの子孫である4万年後の未来人は、確実にやってくる次の氷期を、高度な文明を維持しつつ、どのように乗り切るのでしょうか?
遠い未来とはいえ、気がかりですよね。
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