2020年11月3日、アメリカ大統領選挙が行われます。
トランプ大統領が再選されるのか、民主党が政権を奪取するのか、その結果が、その後の世界の4年間に大きな影響を与えることは間違いありません。
すでに2月から民主党では候補者を選ぶプロセスに入っていて、その動向を日本のテレビもさかんに伝えますので、日本人である私たちも無関心ではいれませんね。
ただ、アメリカの大統領選挙の仕組みが日本人には、いまいち、分かりにくいところがありますので、整理してみました。
また、現大統領のトランプ氏は突飛な言動や政策、側近の頻繁な辞任などで話題が尽きませんが、トランプ大統領のこれまでの4年間の業績はどうなのでしょうか?
対する民主党候補者は誰になるのでしょうか?
そして、ここに来て新型コロナウィルスによるパンデミックは大統領選挙に影響するのでしょうか?
アメリカ大統領選挙の仕組みとは?
[選挙権]
選挙権は18歳以上の合衆国市民すべてに与えられますが、事前に選挙登録事務所に自分で登録が必要です。日本のように黙っていても投票権が与えられるわけではないのです。
アメリカ大統領選挙のプロセスは、民主党・共和党の「候補者指名手続き」と、両党の候補者から大統領を選ぶ「本選挙」から成ります。
[候補者指名手続き]
まず各州で党員集会か予備選挙が行われます。
そこでは全国党大会で候補者を選挙する「代議員」を選びます。各党の大統領候補者を決めるのは党員でなく、党員から選ばれた代議員なのです。
「党員集会」は話し合いで、「予備選挙」は投票で代議員を選びます。
3月の第1火曜日はスーパーチューズデーといい、各州の予備選挙が集中する日です。
代議員は選出される前に、誰を候補に推すか表明しているため、代議員が選ばれた時点で、事実上、党の大統領候補者が決定します。
その後、7月か8月に全国党大会が開催され、代議員の投票により党の候補者が決定します。
候補者は事実上決定しているため党大会は追認機関にすぎません。
[本選挙]
11月の第1週の月曜日の次の火曜日に「一般投票」が行われます。
なお、連邦議会選挙も同様に「11月の第1週の月曜日の次の火曜日」と150年前の法律で定めています。
これは当時国民の多くが、キリスト教徒の農民でしたので、農閑期の11月で、日曜は教会に行くための日で避け、月曜は投票所への移動のための日として、水曜日は多くの町で市場が開かれたため、火曜日を投票日としたといわれています。
一般投票とは、州ごとに有権者が大統領を選ぶ「選挙人」を選ぶ投票です。
州の選挙人の数は、その州の上院議員と下院議員の数の合計と同数です。
投票用紙には、選挙人を選ぶにもかかわらず、選挙人候補者でなく大統領候補者の名前が記載されている州が大半です。
ほとんどの州において、一般投票で最多の票を得た候補者が、その州すべての選挙人を総取りする 「勝者独占方式」(Winner-Take-All)を採用しています。
選挙人はどの候補者に投票するか決まっているため、一般投票の結果で大統領が事実上決定します。
選挙人の投票は12月の第2水曜日の次の月曜日に実施されます。
選挙人投票の開票は、首都ワシントンで、翌1月6日に開票され、過半数を獲得した候補者が次期大統領になるのです。
[就任]
新大統領に就任するのは1月20日正午と規定されています。
[制度の問題]
有権者登録制度は、国政に参加ためには積極的に行動しなければならない制度と読み取ることもできますが、黒人やマイノリティの参加の排除という負の側面がありました。
しかし近年では運転免許などの取得や更新の際に登録できるなどで、そのような負の意味合いを改善しつつあります。
代議員や選挙人による間接選挙についても、一般国民が遠い投票所に出かけ、直接大統領や、大統領候補を選ぶことの非効率さを避けるという建前の理由と、無教養の一般国民が直接大統領を選ぶことへの懸念という為政者の思い上がった理由があったといわれています。
現在では、代議員や選挙人は事前に投票する候補を明確にしますので、間接選挙の意味はなくなってきています。
2020年大統領選、トランプの再選可能性が高い?
さて2016年に就任したトランプ大統領ですが、一期の4年間が過ぎようとしています。
トランプ大統領は就任して以来、米国第一主義政策で、ロシアによる大統領選への介入と共謀、捜査妨害疑惑、移民の排斥、ウクライナ疑惑における「権力乱用」と 「議会妨害」問題などスキャンダラスな問題を引き起こしました。
また、相次ぐ閣僚、側近の辞任で、政策の不統一や政権基盤の不安定さを内外に印象づけています。
政権支持率は一貫して40%台半ばにとどまり、再選を支持しない国民が50%台後半に達していました。
しかし、トランプ大統領再選はほぼ間違いないというのが大方の予想でした。
元来、現職が有利で、戦後12人の大統領で再選されず、任期4年で退陣した大統領は、フォード、カーター、ブッシュ(父)の三大統領のみです。
フォードは、ニクソン大統領の失脚で、無選挙で大統領に昇格した人なので別格として、カーターはイラン大使館人質事件等の失策、ブッシュは国内経済の悪化、公約違反とレーガンとクリントンという強力な対抗者の出現が敗因です。
トランプ大統領の場合、再選の勝敗の行方を大きく左右する米国の経済情勢は絶好調で、失業率も史上最低で、いろいろ物議は醸しても、致命的な失策はなかったというのが一般的な評価でしょうか。
民主党の候補者は?
一方、民主党はこの10年支持者の減少に歯止めはかかっていず、またトランプ大統領に対抗できる個性のある強力な大統領候補がいないという評価です。
民主党はスーパーチューズデーを経て、候補者もどうやら、前副大統領のジョー・バイデン氏(77歳)と急進的な民主社会主義者のバーニー・サンダース上院議員(78歳)に絞られたようです。
バイデン氏は、穏健派で共和党にも人脈があり、経験も豊かということで一歩リードしていますが、ただ、年齢と体力の問題があり、当選しても一期のみで退任する意向を示唆したともいわれています。
サンダース氏は国民皆保険、富裕層への増税、大学授業料無償化などを上げており、今回の新型コロナウィルスにより、国民皆保険の政策で巻き返す可能性もあります。
新型コロナウィルス・パンデミックの影響は?
ここに来て、降って湧いたように、新型コロナウィルスの世界的な流行がアメリカに上陸し、アメリカ経済への悪影響という状況になり、トランプ大統領の再選に暗雲が漂ってきました。
トランプ大統領が3月12日、ヨーロッパからの入国禁止措置を断行すると、ニューヨーク株式市場は世界経済に深刻な影響が出るとの懸念から、ブラックマンデー以来の下落水準となりました。
そこで、さらに中小企業への援助を中心とする5兆円規模の経済対策を打ち出しましたが、依然、市場の動揺を抑えることはできず、世界の金融市場は大混乱に陥っています。
再選は現職に有利というのが定説でしたが、新型コロナウィルスのパンデミックにより、現職であることが不利になりかねない状況となりました。
トランプ大統領が、この新型コロナウィルスへの対応を誤ると、再選の目を摘まれる事になります。
世界のリーダーを決定するアメリカ大統領選挙に、ますます目が離せなくなりました。参考:大統領選挙から見る現在のアメリカ/草野厚研究会第2班
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