地磁気とはなに?地磁気逆転は何回も起こった!

地球と宇宙

登山やハイキングでよく利用する方位磁石は、最近はスマホに装備されていて便利になりました。

赤い針がN極で北を指し、白い針がS極で南を指すのですが、これは地球の北の方角にS極があり、南にN極があって磁力により引かれ合うためです。

そのために地球は巨大な棒磁石に例えられます。

地球が作り出す強力な磁力を「地磁気」、その強さと方向など磁力が及ぶ空間を「磁場」と呼びます。

ただ、地磁気の北と地理上の真北は一致せず、方位磁石はすこしずれた方角を指します。

例えば東京では磁石の針が示す方向は、現在は北極から7度西方向です。

方位磁石が指す北を磁北と呼び、地理上の北と水平方向の差異を「偏角」(へんかく)、垂直方向の差異を「伏角(ふっかく)」といいます。

そのような地磁気はなぜ生じるのでしょうか?また地球や人間にどのような影響を与えているのでしょうか?

そして不思議な事に、S極とN極は地球の長い歴史において何回も逆転したと言われています。

しかもその事実を発見したのが日本の学者で、千葉県の地層にその痕跡が見つかっているのです。

そこで文系にもわかるように地磁気とその逆転現象についてまとめてみました。

地磁気はどうして生まれる?その役割とは?

地球の中心部は固体の鉄やニッケルなどの内核と溶解した鉄やニッケルを主体とする外核からなり、その外側はマントルと呼ばれる岩石の層、一番外側は地殻という構造になっています。

気象庁地磁気観測所HPより引用

地磁気の大部分は、外核で発生します。

ここは今も巨大な圧力と高温のため主成分の鉄が溶融状態にあり、この溶けた鉄は地球の自転などの影響で渦をつくり対流しています。

この流れが大電流を引き起こし、発生した電流は磁場を作りだして、その磁場がさらに対流を引き起こすという循環を繰り返しています。

これを「地球ダイナモ作用」といい、地球だけでなく太陽などの天体も内部の電気伝導体の流体運動により大規模な磁場を形成しているといわれます。

地磁気は地球の周りを囲んだ磁気圏を作り、人間にとって有害な銀河宇宙線太陽風から防御し、さらには大気を地上にとどめるなど重大な役割を果たしています。

銀河宇宙線とは超新星爆発を起源とし、光速に近い早さで宇宙空間を飛び回り、地球に降り注いでいる極小な粒子で高いエネルギーを持つ放射線です。

放射線ですからまともに浴びると、私たちのDNAは大きなダメージを受け癌などを引き起こします。

しかし地球は厚い大気と地磁気によりこの宇宙線を防御し、人類が地上で浴びることを防いでいるのです。

また太陽風は太陽フレア(爆発現象)により太陽から吹き出す高速のプラズマ(電気を帯びた希薄なガス)の放射です。

地球上空での太陽風の速度は秒速400~800Kmに達し、ひどいときには磁気嵐を引き起こして人工衛星に障害をもたらし、携帯電話やインターネットが使えなくなったり送電網に影響を及ぼし停電が起こったりします。

気象庁地磁気観測所HPから引用

しかし、宇宙空間に広がった地球磁場が太陽風の高エネルギー粒子の流れに反発し、太陽と逆側に吹き流されたような形をして地球を防御していて大事に至ることは希です。

ただ磁場によるバリアは太陽風を完全に防ぐことはできず、粒子の一部は磁気圏に侵入し磁場を乱したりしますが、そのうち大気とぶつかることにより光を発する現象がオーロラです。

また、天体が長期に亘り太陽風にさらされると、大気が剥ぎ取られ水も蒸発すると言われています。

例えば太古の火星には大気も水もあったとされますが、十分な磁場が形成されず直接太陽風にさらされたため、大気が剥ぎ取られ、水も蒸発し現在のような乾燥した死の惑星になったという説が有力で、金星についても同様な原因で水分が蒸発したと説明されています。

この考えが正しければ、地球は地磁気バリアーのおかげで豊かな水と大気を保ち、生命を育み高度な文明が生まれたということができます。

地磁気逆転は何回も起こった、ブルン・松山の発見

20世紀初頭、世界で最初に地磁気逆転に気づいたのはフランスの物理学者ベルナール・ブルンでした。

1906年、ブルンは中部フランスのピュイ・ド・ドーム火山の溶岩やその下の粘土層を調査し、検出された磁気が現在の地磁気の向きと正反対(逆帯磁)であることを発見します。

当時、自然界の岩石はその岩石ができたときの磁場を記録していることが知られていて、これを「残留磁化」といいます。

また海底や湖底などに堆積した地層にも残留磁化が存在することがわかっていました。

そこでブルンは地球にはかつて地磁気が現在と逆向きであった時代があったと推論し論文を発表しますが、当時、地磁気研究そのものが進んでいず、ブルンの論文は注目されることなく、彼はその4年後42歳の若さで亡くなります。

その後、地磁気逆転が過去何度も起こっていたことを発見したのは、京都大学の教授だった松山基範です。

1926年、松山は兵庫県の「玄武洞」で採取した溶岩の残留磁化を測定すると現在の地磁気と反対の方向を指しました。

引き続き、精力的に国内各地や朝鮮半島、中国東北部の36地点から溶岩を集め、残留磁化を測定すると、現在の地磁気と同じ方向を指す(正帯磁)ものと、逆向きを指す(逆帯磁)ものがあることに気づきます。

そして逆帯磁の岩石が正帯磁の岩石より古い時代のものであることから、かつて地磁気の向きが現在と逆向きだった時代があったこと、さらに岩石のなかにはもっと古い時代のものがあり、地球の歴史において地磁気逆転が何回も繰り返されていたと結論づけました。

当時は放射年代測定が確立されていず、岩石の年代を推定することが難しいなかで、松山は地層のできた順序による年代推定(年代層序)でこのような結論に達したといわれています。

しかし、ベルナール・ブルンと同様、松山の発見は注目を集めることはありませんでした。

地磁気逆転が認められなかったのは、そもそも残留磁化の仕組みが解明されていないことに加え、「自己反転磁化」という事象があったからです。

自己反転磁化とは、これも日本人研究者が発見した現象で、一部の溶岩は年代に関係なく残留磁化を獲得する際にその時の磁場と逆向きの磁化を獲得するというもので、地磁気逆転は自己反転磁化で説明できるのではないかという論争が起こります。

しかし、その後の研究により自己反転磁化は特殊な磁性鉱物を含む岩石のみで起きていると言うことが明らかにされ論争は決着します。

また放射年代測定方法が確立されると、世界的に同じ年代の岩石で同じ向きの磁化が測定され、地磁気逆転説が証明されました。

さらに溶岩だけでなく、海底堆積物などからも約1億6000万年前までの地磁気逆転の歴史が明らかにされました。

現在では最近360万年の間に11回も地磁気逆転が起こり、最も新しい逆転は、77万年前ということがわかっています。

1964年、米国の科学者により過去の地磁気逆転の歴史の年表(地磁気極性年代表)が発表され、二人の先駆者の業績を讃えて、258.1万年前から77万年前を「松山逆磁極期」、77.4万年前を「松山・ブルン境界」、77.4万年前から現代までを「ブルン正磁極期」と名付けられました。

しかし松山はそのことを知ることなく1958年に亡くなっています。

地磁気逆転はどのように起こり、次はいつ?

しかし地磁気逆転がなぜ起こるのか詳細はわかっていません。

地球の外核の対流が不安定化し逆向きの磁場を形成して地磁気逆転が引き起こされるのではないかと考えられるほか、外核の外側のマントルの動き、あるいは隕石衝突などの外部の影響も議論されています。

はっきりしていることは、地磁気逆転に先立ち、地磁気強度がゼロか数分の一まで減少し、数百年から数千年の時間をかけて方位の反転が進み、地磁気逆転後には強度は回復するということです。

気になるのは、世界で地磁気の観測が始まって200年ほど経ちますが、現在までに地磁気は10%ほど弱まっているということです。

そのため、すでに次の地磁気逆転のプロセスが始まっていて、今後1000年から2000年のうちに地磁気逆転するのではとも言われています。

前回の地磁気逆転は我々ホモ・サピエンスが登場する前で、次の地磁気逆転は人類にとって初めての経験ですので、どのような事態になるのか懸念されます。

地球には地磁気だけでなく大気というもう一つのバリアがありますので大量絶滅のようなことは起こらないであろうとはいわれています。

ただ、前に述べたように、地磁気の力の防御機能が減少すると、太陽風のプラズマの直撃により、人工衛星、GPS、通信・電力などインフラの機能損傷による金融、経済、食料供給などに甚大な影響を及ぼすことが予想されます。

また宇宙線によるオゾン層破壊で紫外線の被爆による人体への深刻な影響が見られるかも知れません。

地磁気逆転の痕跡・チバニアン

2020年1月17日、韓国で開催された国際地質科学連合の理事会において、千葉県市原市の養老川の露出した地層(千葉セクション)が、約77.4万年前から約12.9万年前の期間を示した地層(GSSP)と承認され、この地質年代の名称を「チバニアン」とすることが決定されました。

46億年の地球の歴史は、地質年代表で116に区分されていますが、そのうちの1区間のGSSPに日本の地層が選ばれ、その地名に由来する名称がつけられたのは史上初めてのことです。

千葉セクションが選ばれた大きな理由は、77.4万年前に起こった地磁気逆転の記録が残された地層だからです。

千葉セクション

千葉セクションには伊豆の火山から噴出された多量の磁鉄鉱が蓄積され、測定された残留磁化が地磁気逆転をはっきりと示しているのです。

したがって千葉セクションの研究が今後進めば、地磁気逆転の際に地球上で何が起こったか解明できる可能性があります。

地磁気逆転の気候や生物への影響が明らかになれば、次に起こる地磁気逆転への備えができ、人類への被害を最小にとどめられるかも知れません。

そういう意味で、千葉セクションにはおそらく人類にとって貴重なデータが内在されていると思われます。

参考:地磁気逆転と「チバニアン」/菅沼悠介、気象庁地磁気観測所ホームページ


ITエンジニアに特化した就職支援サイト【IT求人ナビ】

コメント