今年の夏も暑い日が続きましたが、ここ数年、猛暑日はますます多くなっています。
今から考えると、筆者の子供の頃は、気温が30℃超えの日は珍しかったようです。
ですから、地球温暖化が進行していると言われたら、自分の体感でも確かにそうかなと思います。
さて、地球温暖化の原因については、人間活動の結果として排出されるCO2の増加が主原因というのが今や常識になっています。
ですから、国民の多くはCO2削減の必要性についての政府、マスコミなどの盛んなPRを、違和感なく受け止めています。
ところが、調べて見ると意外なことにCO2が地球温暖化の原因とする考え方を疑問視する研究者も実は多いようです。
しかし、現在の世論の潮流に対し、そのような意見は異端としてほとんど無視されています。
温暖化対策の国際ルール「パリ協定」では、2050年までにCO2など温室効果ガス排出を実質ゼロにすることを求めています。
日本政府は、すでに「2050年までに温室効果ガスの80%削減」と「脱炭素社会を今世紀後半の早期に実現」を表明していますが、その目標の実現のため、2030年までに総額100兆円という巨額の税金が投じられるようです。
もしCO2が地球温暖化の主原因でなければ、私たちの税金は間違った使われ方をされることになります。
地球温暖化CO2原因説とそれを否定する説、どちらが正しいのでしょうか?
二酸化炭素を原因する説が定説となった経緯
CO2の温室効果を世界で初めて指摘したのは、1903年にノーベル化学賞を受賞した、スウェーデンの学者、スヴァンテ・アレニウス(1859~1927)といわれています。
CO2排出が地球温暖化を引き起こしているという説が、一般に知られるようになったのは、1988年、米国上院の公聴会でNASAのジェームス・ハンセン博士が行った証言でした。
ハンセン博士は、地球温暖化の進行と、その原因が人間活動により排出するCO2と指摘し、このままでは21世紀は危機的状況になると警告しました。
同じ年に、地球温暖化について科学的評価を行う専門家組織である「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)」が国連に設置され、その報告書が5~7年ごとに発表されるようになりました。
その報告書で、IPCCは、一貫して人間活動によるCO2の増加が地球温暖化の原因と断定しました。
IPCCは、過去1000年以上の気温変化のなかで19世紀以降、急激な温度上昇をしているグラフ、「ホッケー・ステック・モデル」を発表し、温暖化がCO2の排出量増大と相関関係にあることを示しました。
このグラフはその後、地球温暖化が人的なCO2増加が原因であることを示す証拠として、多くの場面で引用されました。
1997年、地球温暖化防止京都会議(COP3)が開かれ、有名な「京都議定書」が採択されます。
京都議定書において、先進国の間で、2008年から20012年までに、1990年比で5%(EU8%,米国7%、カナダ・日本6%)の温室効果ガスを削減することが取り決められました。
しかし、米国は経済への影響を懸念し、批准せずに京都議定書から離脱します。
また、カナダも一旦批准したものの、米国、中国、インドなどが排出規制の対象になっていないことなどを理由として離脱します。
2006年、ゴア元米副大統領による、CO2を原因とする地球温暖化の深刻な影響を訴えた映画「不都合な真実」は大評判となり、アカデミー賞を受賞し、ゴア氏にはノーベル平和賞が与えられました。
2015年、「パリ協定」が締結され、2030年までに2013年比でEUは24%、日本は26%、など新たな削減目標がきめられます。
しかし米国のトランプ大統領は、中国、ロシア、インドが何もしない協定は不公平として京都議定書に引き続き「パリ協定」を離脱します。(正式な離脱予定日は2020年11月4日)
これらを背景として、多くの学者、各国の政府、マスメディア、環境団体もCO2原因説を喧伝し、地球温暖化の原因がCO2であることが通説として定着していきます。
他方では、2009年、英国の大学の気候研究のデータベースにハッカーが侵入し、盗んだ大量のファイルをインターネットで公開するという事件が起こりました。
その中に、地球温暖化CO2原因説を強調するための改ざんが行われたと疑われる証拠や反対論者の死去への下品な言葉が含まれていたためスキャンダルになり「クライメートゲート事件」と呼ばれました。
二酸化炭素原因説への懐疑と反論
人間がCO2排出を増加させてきたのが、地球温暖化の主な原因であるというのが、現在の圧倒的な多数説ですが、そのような潮流に対し、下記のような疑問を呈する研究者もまた多く存在します。
① 現在の温暖化は、1400年から1800年の間にあった「小氷河期」からの回復にすぎず、CO2が主原因ではない。
気候学者マイケル・マンが作成し、IPCCが発表した「ホッケー・スティック・モデル」はその「小氷河期」が織り込まれていず、間違いも多く信頼に値しない。
② CO2の急増が始まったのは1946年頃からで、温暖化はその前から起こっていた。また、1940年代から1970年代半ばまでは、むしろ地球は寒冷化しており、CO2との相関はない。
③ 現在、地球は温暖化し、CO2増大は確かとしても、気候変動のデータを厳密に見ると、気温の上昇が先でCO2の増加は半年から1年遅れている。
つまりCO2の増加が気温の上昇を招いているのではなく、逆に気温の上昇がCO2の増加を引き起こしている。
気温の上昇により、海水に溶解していたCO2が大気中に放出されているのだ。
④ CO2の増加は否定しないが、CO2は大気の構成では0.04%にすぎないので、その増加は地球温暖化に結びつかず、温室効果ガスの中では0.3%の水蒸気の増加の影響が大きい。
⑤ 地球の気温変動は、太陽の活動、宇宙線量にともなう雲量の変化、ミランコビッチサイクルによる地球と太陽の関係から起こり、人為的なCO2排出の影響は極めて小さい。
このような懐疑派の異論に対し、CO2原因とする側の反論もいろいろな場面で発表されています。
しかし、私たち一般人が理解するには難解な説明が多く、一般の国民にわかる形での簡明な説明がほしいところです。
要約するとCO2肯定派の主な反論は、次の内容と思われます。
⇒「ホッケー・スティック・モデル」のミスは枝葉末節な部分で、結論は変わっていない。
⇒温暖化が先かCO2増加が先かについては、CO2により気温が上昇し、海洋がCO2を放出し、そのCO2によりさらに気温が上昇した。
⇒1940年代から1970年代半ばまでの寒冷化は、太陽活動や火山活動の影響のため、CO2による温暖化を打ち消したもの。
⇒IPCCのシミュレーションには、太陽活動、水蒸気、その他の自然現象などをきちんと顧慮に入れており、それでもCO2の影響抜きにしては20世紀の温暖化は説明できない。
地球温暖化、二酸化炭素原因説は本当?・まとめ
CO2肯定派も懐疑派もそうそうたる研究者で、その論争はどちらが正しいのか一般人には判断がつかないというのが、本当のところではないでしょうか。
ですから両派とも、一般人にもっと理解できるような論争をお願いしたいところです。
折しも政府は、温暖化ガスの排出目標を従来よりも高く設定し、2050年度には排出目標を実質ゼロにすると発表しました。
これは「パリ協定」の「産業革命前からの気温上昇を1.5℃以内に抑える」という目標を達成する水準で、EU諸国ではすでに目標としている基準ですから、我が国が、国際的に批判されないような施策ではありますが、実現性は厳しいようです。
ですから、懐疑派の「CO2削減という、その有用性に学問的に確定していず、実現の可能性もない温暖化対策に使う巨額な資金を、後進国の貧困や難民問題など、人類の切実な問題解決にもっと振り向けるべき」の意見に心引かれるところがあります。
CO2肯定派と懐疑派は、「懐疑派は、石油など化石燃料企業から資金援助を受けている」、「CO2派は、原子力推進勢力、再生エネルギー企業などから支援を受けている」など互いを批判し、本来の科学論争外まで対立のひろがりを見せています。
特に多数派であるCO2肯定派は、マスコミに対し懐疑派の意見を対等に扱うことに圧力をかけ、懐疑派以外の中間の立場の人々からも、「学問の自由」、「言論の自由」を侵害しているとして、批判を受けています。
巨額の税金を無駄にしないため、もっとフリーな議論を公開してほしいと思うのは筆者だけでしょうか。
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