火星テラフォーミングとは?火星を第2の地球に変える!

地球と宇宙

「火星テラフォーミング」とは、火星を人間が住むことが出来る環境に変えることです。

すなわち火星を「第2の地球」にすることです。

火星を第2の地球にしようとする構想が生まれたのは、スペースX社のイーロン・マスクがいうように、気候変動や戦争、小惑星の衝突などで、地球が危機に陥った際の人類の脱出先の確保が理由です。

たとえ地球が滅んでも、火星に移住できれば、少なくとも人類は生き続けることができるという発想です。

 

 

 

 

 

それではなぜ火星かというと、太陽系では唯一テラフォームの可能性がある惑星だからなのです。

地球のすぐ外側を回り、地球と同じ地殻型の惑星で、一日の長さもほぼ地球と同じです。

もちろん、火星は大気が薄くその大部分は二酸化炭素で、平均気温はマイナス43度で、人間が生存できる環境ではありません。

また少なくとも、地上表面には水も見当たらず、生命体も今のところ発見できていない死の世界といえます。

そのような火星のテラフォーミングは本当に可能なのでしょうか?

その方法はどういうもので、いつ人間が住めるようになるのでしょうか?

テラフォーミングとは?提唱者は?

そもそも、テラフォーミングというSF小説の、一見荒唐無稽な発想を学問のレベルまで引き上げ、論じたのは有名な天文学者でNASAの学問的支柱でもあったカール・セーガンでした。

セーガンのテラフォーミングの最初の対象は金星でした。

セーガンは、藍藻類を金星上空から大量にばらまくことにより、藍藻が二酸化炭素を吸収して酸素を吐き出す光合成を行い、大気中の二酸化炭素を減らし、大気温度を下げていくという方法を提案しました。

しかし、セーガンがこのアイデアを考えたのは1960年代でしたが、その後の金星探査により、金星が灼熱地獄の状態であることがわかってきたため、1970年代になると研究の対象は金星から火星に移っていきました。

火星のテラフォーミング研究においても先鞭を切ったのはカール・セーガンでした。

彼は極冠に存在するドライアイスの氷黒い土を散布して、太陽光の吸収を促進させて気化させ、二酸化炭素を発生させることにより、気温を上昇させる方法を提唱しました。

その後、多くの研究者が火星テラフォーミングの方法を発表しています。

これらを見ていきましょう。

テラフォーミングの方法は?可能性は?

火星をテレフォーミングすること、すなわち人が住むことができるようにするには、

 

 

 

 

 

① 平均気温を現在の-43℃から50℃程度上昇させる。

② 地表の大気圧を地球とほぼ同じ1000hPa(ヘクトパスカル)まで高める。

③ 大気の成分を今の地球大気に近いものにする。

④ 地表に降り注ぐ有害な紫外線をできる限り減らす。

ことが必要です。

これらの条件は、互いに関連していますので、1つの条件を満たせば他の条件が達成しやすくなります。

火星温暖化方法

まず気温の上昇方法については、火星の周回軌道に巨大な太陽光反射鏡を設置し、太陽光を集めて、火星の極冠に反射させ、極冠に存在する氷を溶かす方法があります。

これにより大気中に二酸化炭素と水蒸気が発生し、二酸化炭素の温室効果により火星の気温が上がるというアイデアです。

ただ半径100キロ以上の反射ミラーが必要で、その材料である非常に薄いフィルム状のアルミ素材は20万トン以上が必要とされます。

また、カール・セーガンのアイデアと同じように太陽光を吸収しやすい黒色の炭素系物質の粉を火星表面に散布し、太陽光エネルギーで気温を上げる方法があります。

これについては、炭素物質が火星に吹く風に吹き飛ばされるのではという指摘もあります。

直接、温室効果ガスを活用する方法もあります。

フロンのような温室効果ガスを火星に持ち込むか、火星で人工的に生産する方法です。

以上のような方法で、気温上昇を行い、火星の表土と南極に閉じ込められて凍結している二酸化炭素を解放すると地球の30%から60%の大気を獲得でき、富士山頂程度の大気圧となるといわれています。

酸素濃度の向上

次に、大気中の酸素濃度を向上させるには、気温の温暖化方策で二酸化炭素が増えてきたら、藻類を火星に持ち込み、光合成により酸素を生み出させるという段階になります。

火星には現在極冠の氷の下に水が存在するといわれており、その水を温暖化により表面に導くことが可能となります。

そこに遺伝子組み換えにより、火星でも生育できる藻類を繁殖させ、光合成により酸素を増加させていきます

大気中の酸素濃度を上昇させることで、酸素は紫外線に当たって化学反応を起こし、オゾン層を作り出して有害な宇宙線を地表に届かなくさせるようになります。

これで人間は防護服なしで、火星の地上を行動することができます。

ここまでくると、食料の自給自足のために農作物の移植、飲み水の確保、工場の建設など加速的に進展し、地球からの物資に依存しない火星テラフォーミングが完成することになります。

このようなアイデアは、実現可能性は大いにあるのは間違いありません。

ところが、時間軸としては残念ながら1000年から1万年かかるといわれて、技術的に可能でも着手する動機づけに乏しいことになります。

より現実的なパラテラフォーミングとは

そこで、より現実的な方法としては、火星表面に巨大な構造物の、閉鎖した居住空間を建設する方法で、これを「パラテラフォーミング」といいます。

ロンドン大学のテイラーが提案した現実的なシナリオです。

その方法は、火星の地表を天井構造である天蓋で覆うというもので、その巨大な居住空間を「ワールドハウス」と呼びました。

ワールドハウスの天蓋は高さ1~3km内部には川が流れ、空気は循環し、様々な植物が生育し、動物も生活しています。

ただし、酸素を中心とする大気や水などを火星上で獲得することはパラテラフォーミングでも同様です。

 

 

 

 

 

このパラテラフォーミングのメリットは次の通りです。

まず、大気量がはるかに少なくてすむという点です。

完全なテラフォーミングでは、火星を地球と同じ1気圧の大気で覆うには、火星の重力が地球の3分の1しかないことが原因で、地球の大気の4分の3もの量が必要になります。

それに対し、パラテラフォーミングでは必要な大気は地球の10分の1で済み、ワールドハウスの面積が小さければさらに少なくなります。

そのため、建設のための時間も短く、コスト的にも優れています。

また別の利点として、モジュール方式という、部分的な構造をいくつもつないでいく方式で、天蓋をもつ多数のモジュールが組み合わされるため、最初のモジュールが完成すれば、すぐにそこで生活できることになります。

完全なテラフォーミングでは、惑星全体が生存可能にならなければならないのでこの違いは大きいと思われます。

パラテラフォーミングの、最も優れた点は、現在の科学や建築技術で実行できることです。

 

 

 

 

 

 

 

高さ1~3kmの天蓋を支えるのは、超高層ビルや鉄塔ですが、火星の重力は地球の3分の1なので、強度もずっと小さくて済みます。

実際、1960年代にイギリスのウィレム・フリッシュマンという建築家が、地球上に850階建て、高さ3.2kmの超高層ビルを建設しようと提案したことがあり、当時の技術でも作れるものだったといいます。

日本でも清水建設や大林組が1980年代に2000mから4000mの巨大ビルディングの構想を発表していますし、現実にドバイや中国ではすでに1000m級の超高層ビルが建設されています。

とすれば、当時よりはるかに優れた建築材料と建設技術がある現在なら、重力の小さい火星でそうした超高層ビルを建てることは充分可能といえます。

火星テラフォーミングとは?火星を地球に変える!まとめ

以上、火星テラフォーミング、パラテラフォーミングについてみてきましたが、これらは実現可能でも、巨大な資金と長い時間が必要なことは間違いありません。

火星に目を向けるより、今私たちが住む地球の改良にその資金と時間をかけたほうがいいという意見があることも事実です。

火星のテラフォーミングやパラテラフォーミングに費やす資金や時間があるなら地球をさらに開発すべきという意見は正論かもしれません。

イーロン・マスクがいうような、気候変動や戦争、小惑星の衝突などで、地球が危機に陥った際の人類の脱出先の確保ということは、まだ現在では切迫感は薄いのかもしれません。

しかし、近未来での人口増、地球の資源枯渇への備えのため、宇宙を開拓することは必要となると思われます。

それ以上に、人々を火星に向かわせるのは、人間が持って生まれた開拓者精神であり、壮大なロマンへの憧れなのかもしれません。

参考:「人類が火星に移住する日」/技術評論社



 

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