経営トップの思いを織り込んだ行動指針とは?–私の中小企業経営(Ⅰ)

ビジネスと中小企業経営

国内経済の鈍化に加え、いつ収束するとも知れない新型コロナウイルスの蔓延による経済活動の低下などで、特に人的、財務的資源に乏しい中小企業を取り巻く環境は相当厳しい状況ではないかと思います。

とは言っても、中小企業の置かれた環境はいつの時代も厳しく、好景気の時でも廻ってくる利潤はすくなく、すぐれた経営者たちは粘り腰で生き抜いて、会社を存続・成長させてきました。

そのような、中小企業経営者は会社のすべての場面で先頭に立ち、強力なリーダーシップを発揮してきたはずです。

中小企業の経営者は、会社の将来と従業員の未来を語る事も必要です。

一方、オールラウンドのプレイングマネジャーとして、中小企業経営者は、自ら、月末の資金繰り表をチェックしなければなりません。

自分の目で見て人を採用し、お客様や取引先には、自ら出かけ、営業活動やクレームの対応をする必要があります。

自分で頻繁に工場を見て回り、安全対策や改善方策を、直接指示しなければなりません。

 

 

 

 

 

わたしは会社を離れて半年経ちました。

記憶が薄れないうちに、中小企業の経営で経験したことを記述していきたいと思います。

今回はつたないながらも、私が作成した「行動指針」「補足説明」とともに紹介します。

もし、現在中小企業の経営の任に当たっている方や、これから中小企業の経営者に就こうとしている人が読まれて、すこしでも、参考となればありがたいと思います。

行動指針とは?会社員・組織人としての行動規範

「行動指針」とは企業が経営目標や、経営ビジョンを実現するため、従業員の規範とする行動を定めたものです。

「行動指針」により、会社は従業員にどのような行動を求めているのかが明確になり、従業員が共通の認識を持つことになります。

また社内、社外での従業員の振る舞いのベースが定められ、企業風土が醸成され、従業員の一体感も生まれます。

そしてなによりも「行動指針」経営者の企業哲学を反映されていなくてはなりません。

したがって、経営者が「行動指針」を示すことは必須の仕事なのです。

ただし、経営者は、従業員に行動指針を一方的に押しつけるのではなく、従業員に機会ある毎に、その意味を説き、その行動を取りやすい、環境整備を整える努力をする必要があるのは当然のことです。

「行動指針」の展開と「補足説明」

私は毎年、株主総会で経営を担当することの承認をいただいた翌日、従業員の全員集会と幹部職員を集め、下記の「行動指針」と「部門別要請事項」(次回参照)を提示し、各部門での展開をお願いしました。

「行動指針」は会社の重要な規範ですから、毎年コロコロ変わるものではありませんが、会社の情勢で濃淡を変化させることは必要だと思います。

その際、「行動指針」は平易で簡潔な語句ですから、「補足説明」を用意し、要点を説明しました。

これが実は一番社長として話したい内容かもしれません。

繰り返しますが、中小企業の経営者は従業員に高邁な理論を述べるより、従業員の地に着いた具体的な行動のコンパスを説かねばなりません。

そういう思いで、十分とは言えないのですが、作成し周知を要請したものです。

[行動指針]

① 決められた期限までに業務を完遂するという強い意志と責任感
② 自由闊達な議論を行い、決定事項は一致団結して実行
③ 決定事項・上長の指示事項に対するquick actionと経過報告
④ sectionalismを排し守備範囲を広めに設定した業務遂行
⑤ 現状の仕組み・取組方法の持続的な改革
⑥ 新しい技術・製品への積極的な取り組み
⑦ 安全確保に対する責任感と義務感
⑧ 部下の状況把握と育成・指導
⑨ 法令遵守の徹底

 補足説明で行動指針で伝えられないことを説明

行動指針の各項目について、この短い語句では伝えきれないことを、補足説明で説明し、理解を深めてもらいました。

【補足説明】

[執着心を持て]

仕事は絶対やり遂げるという執着心を持ち、部下にも持たせるような指導をしてください。

強い意志と責任感を持った人かどうか、上司・同僚・部下、お客様などから常に見られています。

これにより長い会社人生で頼りになる人かどうかも評価されています。

[事前承認と事後承認の決まりごと]

日々の業務の中では、会社の決裁規則に定めのない事項は多々起こります。そのうち

・上長に事前承認を得る必要がある事項
・事前に情報を連絡しておいたほうが良い事項
・事後報告で良い事項
・報告の必要がない事項

を即判断できるようにしてください。

[quick action・quick report]

指示事項はquick actionと経過・結果の迅速な報告を心がけてください。

遅延を許すと会社全体のスピードが遅くなり、社内の空気がぬるくなる。ライバル会社に後れをとります。

時間を要する場合はその理由と途中経過を報告してください。

自分に難しい課題は自分だけで悩まず、周囲にヒントをもらい少しでも前に進めることを心がけましょう。

ともかく早く着手すること、納期に遅れるのは多分に本気で着手が遅い場合が多い。
(なんでも即やれ、すぐやれ、モタモタするな、やれない言い訳よりやる方法を考えよ)

問題点の相談には丸投げでなく不十分でも自分の対案をつけてください。

[bad news first]

悪いニュース、あるいは業務上のミスは勇気を持って、躊躇なく迅速に上長に報告してください。時間がたてばたつほどリカバリーが難しくなります。

[Mr. Nomanになるな]

守備範囲を広めに取って仕事をして下さい 。

業務範囲は時々刻々変化します。従来の所掌範囲にこだわると、会社としての対応に穴があき重大な結果を生み自部門固有の責任すら果たせません。

何を頼まれても、議論しても、「不可能です’‘難しいです」、「忙しいのでできません」、「手一杯です」、「厳しいでしょう」、「私の仕事ではありません」など、いつも否定から始まる人はMr. Nomanと呼ばれ、相手にされなくなります。

Mr. Nomanにならないように心がけてください。

[全はすべてに優先する]

私たちは常に重大災害と隣り合わせで仕事をしているという意識を忘れてはなりません。

労働災害に想定外はなく、人は必ずミスし、予想はいつもはずれることを前提として危険予知を向上させてください。

上司は、部下から絶対けが人を出さないという熱意と責任感を持って指導してください。

『ハインリッヒの法則』(1件の重大災害の裏には29件の軽微な災害が発生しており29件の軽微な災害が起こる前には300件の異常事象がおこっている)とは、
一言でいえば重大災害には数多くの予兆があるということです。

重大災害の予兆であるヒヤリハットの事象をつぶしていくことが重要です。(気づき・気がかりを粗末にするな。気づいたらすぐ行動に移せ)

[ハインリッヒの法則は品質不具合にも適合する]

1件の重大不具合の裏には軽微な品質不良が発生しており、軽微な品質不良が起こる前には多くのミスがおこっています。

すなわち安全衛生活動は仕事の質を追求するプロセスで、品質向上・生産性向上・職場のモラルアップにつながる企業体質強化活動と言うことができます。

[人材育成]

上司は部下の育成・管理に注力してください。

ミーティングなどで部下の体調変化に目配りをしてください。

好き嫌いでなく公正な人事考課を行い、研修・ローテーションなどにより部下の能力の向上と社会人としての成長を支援してください。

[適切な業務負荷]

部下の業務量を注視し、高負荷で業務遅延・残業の集中していないか、手持ち無沙汰でないか、仕事がマンネリ化していないかチエックを忘れないでください。

 

 

 

 

 

[正しく叱る]

部下を叱ることも大切です。「部下に嫌われたくない症候群」の上司は重要な任務を担えません。

『正しく叱る』ことを心がけてください。

すなわち、叱ることもコミュニケーションのひとつであり、相手に理解してもらいたい意味と期待を伝えるということです。

叱る理由は、現実とあるべき姿とのギャップ。そのためには叱る側が明確な理想や目標を持っている必要があります。

言うまでもなく部下の能力・人格を無視した感情的な叱責はハラスメントとして糾弾されます。

[法令遵守]

法令遵守の徹底は言うまでもなく、社会人・企業人として疑念の目で見られるような行動は慎んでください。

ハラスメントに対する理解を深め、部下の意見を取り入れ、働きやすい職場の構築を進めてください。

[組織力最大化とリーダーの役割]

企業活動は組織で行うチーム活動です。

しかし人はチーム活動のなかで、「自分が頑張らなくても他人がやってくれる」、「自分が全力でやっても大した貢献にならない」、「自分の働きはどうせ評価されないので割に合わない」、「他の人も全力を出していないではないか」などという心理に陥り、手を抜いてしまいがちです

この現象を『社会的手抜き』、『リンゲルマン効果』といいます。

会社が厳しい競争に打ち勝っていくには、この「手抜き」を極少化させ、組織の力を最大限に発揮させる必要があります。

そのためにリーダーの役割は重要です。

リーダーは常に先頭に立って行動し、方針とメンバーの役割を明確に示し、そして部下の努力・成果をきちんと認めて評価してください。

<次回は部門別要請事項を説明します>

<私の中小企業経営(Ⅲ)新入社員への言葉>



 

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コメント

  1. […] <私の中小企業経営(I)からの続きです> […]